2022 Fiscal Year Research-status Report
Program evaluation of non-pharmaceutical interventions against CIVD-19 combined with voluntary preventive behavior
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21K01522
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岩本 康志 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (40193776)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 新型コロナウイルス感染症 / 政策評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、感染症対策が経済社会活動に多大な影響を与えたことから、「実際にとられた対策は、健康と経済のトレードオフ、および健康と自由のトレードオフのもとで、適切に行われてきたか」を問う。2022年はオミクロン株で弱毒化したにもかかわらず対策が緩和に転じない状態にあったことから、2023年度に予定していた政策評価を前倒しで実施することにして、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく感染症対策での私権制限の妥当性について検討した。(1)政府対策本部の設置の際にはウイルスと感染症のデータが整備され、設置の条件の確認がされていたが、2022年にはデータの更新が遅れ、政府対策本部廃止の意思決定も遅れた。私権の制限の濫用を避けるには条件の定義と運用について見直しが必要であることが指摘できる。設置と廃止が対称的な構造になっているが、不確実な状況の意思決定としては非対称な構造にも合理性があると考えられる。(2)事業者の営業制限に焦点を当て、事前の想定とは異なった対応を取らざるを得ない場合の営業の自由の制限と補償の在り方を考察した。 また、感染症数理モデルに基づく科学的助言に基づいて実施されたように見える2020年4月の緊急事態宣言発出時での接触8割削減について、感染症数理モデルの分析結果が再現されない問題をとりあげ、この問題の政策的影響について分析した。この結果は、2023年度に論文にまとめる予定である。 昨年度に研究したネットワークSIRモデルでは2次モーメントの存在しない複雑ネットワークについて、モーメントに依存しない含意を新たに取り入れた。その他に、政策効果を顧みず、形式的な対策をおこなう現象を理論的に理解する試みとして、「『やってる感』の政策評価」を日本財政学会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年はオミクロン株で弱毒化したにもかかわらず対策が緩和に転じない状態にあったことから、2023年度に予定していた政策評価を前倒しで実施することにして、事例研究的手法で2本の論文をまとめた。 (1)「政府対策本部の設置と廃止:事例研究 新型コロナウイルス感染症」では、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく政府対策本部が科学的・客観的条件に基づいて運用されていたか否かを検討した。設置の際にはウイルスと感染症のデータが整備され、設置の条件の確認がされていたが、2022年にはデータの更新が遅れ、政府対策本部廃止の意思決定も遅れた。私権の制限の濫用を避けるには条件の定義と運用について見直しが必要であることを指摘した。設置と廃止が対称的な構造になっているが、不確実な状況の意思決定としては非対称な構造にも合理性があることが導かれる。 (2)「事業者の営業制限:事例研究 新型コロナウイルス感染症」では、事業者の営業制限に焦点を当て、事前の想定とは異なった対応を取らざるを得ない場合の営業の自由の制限と補償の在り方を考察した。 また、感染症数理モデルに基づく科学的助言に基づいて実施されたように見える、2020年4月の緊急事態宣言発出時での接触8割削減について示されている感染症数理モデルの分析結果が再現されない問題をとりあげ、この問題の政策的影響について分析した。この結果は、2023年度に論文にまとめる予定である。 昨年度に研究したネットワークSIRモデルでは2次モーメントの存在しない複雑ネットワークについて、モーメントに依存しない含意を新たに取り入れた。その他に、政策効果を顧みず、形式的な対策をおこなう現象を理論的に理解する試みとして、「『やってる感』の政策評価」を日本財政学会で発表した。以上のように、順調に研究成果をまとめることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
予定していた研究の順番を入れ替えが生じているが、全体として当初計画通りの研究を推進して、最終年度のまとめをおこなう予定である。今年度は、集計量を用いた厚生損失と活動収縮の不均一を考慮した厚生損失を推計、事業者への営業制限による厚生損失の評価、民間の内生的予防行動による影響も含めた損失に対する補償の体系の評価の研究を進行させる。 また、3年間のしめくくりとして、ノンテクニカルサマリーの作成、研究成果を公開するホームペーの作成を通し、アウトリーチ活動を行う。
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Causes of Carryover |
消耗品と資料の経費が予算枠を若干下回ることになり、1,000円程度の未使用額が生じた。次年度は消耗品経費を増額するが、少額であり研究計画には変更ない。
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