2021 Fiscal Year Research-status Report
人口減少社会において住民が満足できる持続可能な自治体の連携と集約に係る経済分析
Project/Area Number |
21K01532
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
井田 知也 近畿大学, 経済学部, 教授 (50315313)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小野 宏 大分大学, 経済学部, 准教授 (30381023)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 自治体の連携と集約 / 人口減少社会 / 住民満足 / 持続可能性 |
Outline of Annual Research Achievements |
今後、我が国では人口減少に伴い税収が低下する一方、高度経済成長期に集中的に整備されたインフラの維持管理費などを中心に歳出増加も見込まれる。その結果、財政難に直面する多くの地方公共団体は、現在の公共サービスの水準を維持できず、市民生活にも大きな支障が生じる。この課題に対して、我が国では「地方自治体の連携と集約」が有効な対策とされ、定住自立圏構想などの地域政策がとられている。ところが、国内外の分析結果を見ると、両者の効果に必ずしも肯定的でない。つまり、持続可能性や住民満足を高める公共サービスの供給費用の低下やその品質の向上を導くとは限らないとされる。そこで、本研究では地方自治体の連携と集約が公共サービスの供給費用と品質に及ぼす効果を分析して、持続可能で住民も満足できるそのあり方を明らかにする。具体的には、(1)基礎分析「集約と連携の指標構築と定住自立圏のヒアリング調査(2021-23年度)」、(2)理論分析「地方歳出関数の導出と公共サービスの集約と連携の弾力性の定式化(2021-23年度)」、(3)実証分析「地方歳出関数の推計と公共サービスの集約と連携の弾力性の計測(2022-24年度)」、(4)政策提言「持続可能性と住民の満足を両立する地方自治体の集約と連携に係る提言(2022-24年度)」からその目的を達成する。この中で2021年度は次の様な分析を実施した。(1)基礎分析では、地方自治体の集約に係る指標に関しては、基盤となる都市構造変数をデータの単位や数値範囲などから受ける影響を調整した上で再構築した。他方、地方自治体の連携に係る指標作成に必要な基礎調査を、総務省が作成した『定住自立圏取組事例集』などを活用しながら実施した。(2)理論分析では、説明変数に地方自治体の集約に係る指標も含めた地方歳出関数を、既存研究の分析枠組みを踏襲しながら、公共サービスの需要関数と費用関数の結合から理論的に導出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は(1)基礎分析「集約と連携の指標構築と定住自立圏のヒアリング調査(2021-23年度)」、(2)理論分析「地方歳出関数の導出と公共サービスの集約と連携の弾力性の定式化(2021-23年度)」、(3)実証分析「地方歳出関数の推計と公共サービスの集約と連携の弾力性の計測(2022-24年度)」、(4)政策提言「持続可能性と住民の満足を両立する自治体の集約と連携に係る提言(2022-24年度)」から構成される。(1)基礎分析と(2)理論分析の中で2021年度に予定していた分析内容は概ね実施できたと思われるが、新型感染症の影響などもあり一部は実施できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、(1)基礎分析「集約と連携の指標構築と定住自立圏のヒアリング調査(2021-23年度)」、(2)理論分析「地方歳出関数の導出と公共サービスの集約と連携の弾力性の定式化(2021-23年度)」、(3)実証分析「地方歳出関数の推計と公共サービスの集約と連携の弾力性の計測(2022-24年度)」、(4)政策提言「持続可能性と住民の満足を両立する地方自治体の集約と連携に係る提言(2022-24年度)」からなる。(1)基礎分析では、2021年度に実施した基礎調査を基盤に、地方自治体の集約と連携に係る指標の完成を目指す。他方、ヒアリング調査に関しては、延期の可能性もあるが新型感染症の状況を勘案しながら対面実施の方向で進める。(2)理論分析では、2021年度に構築した地方歳出関数を基盤に、公共サービスの品質に係る集約と連携の弾力性(地方自治体の連携や集約が1%進むと公共サービスの品質は何%変化するかの指標)を定式化する。(3)実証分析では、地方自治体の集約・連携に係る指標を含む地方歳出関数の推計から、公共サービスの品質に関する集約と連携の弾力性を計測する。(4)政策提言では、各分析の成果に基づき実効性が高い地方自治体の集約と連携に係る政策提言を構築して、国内外での学会報告と査読付学術雑誌への投稿などを通じてその公表に努める。
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Causes of Carryover |
新型感染症の影響により、2021年度に予定していた研究代表者・研究分担者・研究協力者間の研究打合せや一部の分析が延期となった。そのため、この研究打合せの旅費だけでなく、前出の分析に必要な物品費や謝金などは2022年度以降に使用予定である。
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Remarks |
〇研究報告 井田知也「都市スプロールが水道サービスの供給費用に及ぼす影響(共著 小野宏・菅原宏太・倉本宜史)」地方分権に関する基本問題についての調査研究会・専門分科会(財政マネジメントの強化)、一般財団法人自治総合センター、2021年11月5日。
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