2022 Fiscal Year Research-status Report
男女の不平等度が学力の性差に与える影響についての実証分析
Project/Area Number |
21K01536
|
Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
玉田 桂子 福岡大学, 経済学部, 教授 (80389337)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | ジェンダー指数 / 学力 / ジェンダー格差 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、健康、教育、政治、経済分野における男女の不平等度が男女の学力差に与える影響を分析している。男女の不平等度の指標と男女の学力差の関係を分析した先行研究では、男女の不平等度が小さくなるほど男女の数学の学力差が縮小する傾向にあるという結果と、男女の不平等度は男女の学力差に影響を与えないという結果が混在している。異なる結果が得られた理由としては、分析対象とする国の違いや不平等度を測る指標の違いが考えられる。特に、中東諸国においては平均して女子の数学の学力が男子の学力を上回っており、男女の不平等度は大きい傾向にあるが、欧米諸国では女子の数学の学力は男子の数学の学力を下回っており、男女の不平等度は小さい傾向にある。このため、分析対象とする国によって結果が変わった可能性がある。本研究では、最新のデータを用いることによって中東諸国および欧米諸国など幅広い国を対象とすることができた。さらに男女の不平等度を測る指標について、複数の分野の不平等度を一つの数値にまとめた総合指数だけではなく、総合指数を計測する際に用いられる個別の変数にも注目した。個別の変数に注目することによってどの分野の不平等度が男女の学力差に影響を与えるのかについて明らかにできる。現在進行中の分析では、男子の学力が女子の学力を上回っている場合には、高等教育の進学率の男女差が縮小すると男女の数学の学力差が縮小するが、女子が男子の数学の点数を上回っている場合には、高等教育の進学率の男女差が縮小すると男女の数学の学力差が拡大することが明らかになった。一方で、男女の不平等度の総合指数や労働参加率の男女差、国会での女性の議席割合、初等教育・中等教育の生徒数の男女差、思春期出生率、妊産婦出生率は男女の学力差には影響を与えていないことが示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年は、予定どおりに複数の男女の不平等度の総合指数だけではなく、個別の分野の男女の不平等度のデータを整備し、様々な分野の男女の不平等度と男女の学力差の関係について多くの国を対象として分析を行なうことができた。その結果、高等教育の進学率の男女差が男女の学力差と相関していることが明らかになった。これらの結果を国際学会で報告しフィードバックを得て現在はさらに論文を改善しているところである。これまでの分析で明らかになったことは、総合指数や健康、労働参加率、識字率や初等教育、中等教育の男女差については男女の学力差と相関を持たないが、高等教育の男女差については男女の学力差と相関を持つことである。これらの結果は、男女の不平等度と男女の学力差が線形の関係にあるという仮定に基づいているが、数学の学力差も女子が男子を上回っている国が存在する上に、個別の分野の男女の不平等度の指標を見ても女性が男性を上回っている国も存在していることから、男性と女性との間に差がない状態を変曲点として、男性が女性を上回る場合の不平等が拡大したときに男女の学力差が拡大(または縮小)し、女性が男性を上回る場合の不平等が拡大したときの男女の学力差が縮小(または拡大)する可能性も考えられることに気がついた。そこで、現在は男女の不平等度と男女の学力差との非線形の関係に注目して分析を行なっている。今年度は非線形の関係を考慮した分析の結果が頑健であるかについて確認を行い、論文をまとめる予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在行っている分析の頑健性を確認するためにさらに推定を行う。コロナ禍も落ち着き、対面での国際学会報告も可能になったため、得られた結果を国際学会等で成果を報告する。報告を行なってフィードバックを受け、論文をさらにブラッシュアップし、査読付き雑誌への投稿を目指す。
|
Causes of Carryover |
2022年度は対面で参加予定だった学会にオンラインで参加したため、旅費が不要になり次年度使用が生じた。今年度は対面の国際学会に参加予定であるが、円安のため当初予想した以上の費用がかかるため、次年度使用分は旅費に使用する予定である。
|