2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K01538
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
大野 太郎 信州大学, 学術研究院社会科学系, 教授 (90609752)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 所得税 / 住民税 / 控除 / 負担軽減効果 / 再分配効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
今日、社会保障制度の維持には家計の税負担の見直しが必須であると考えられる中、基幹税である所得税・住民税の再検討も求められている。これらの税制において控除制度のあり方は重要な政策課題の一つであるが、その検討にあたっては控除による負担軽減効果の構造や所得再分配機能への影響についてエビデンスに基づいた実態把握が欠かせない。本研究では家計の個票データ(調査票情報)を用い、調査票に記載された世帯の収入・属性に現実の制度を当てはめて負担額を推計するマイクロ・シミュレーションの手法を適用しながら、1990年代以降における所得税・住民税を対象に、控除の負担軽減効果と再分配効果について定量的に評価する。2021年度は総務省『全国消費実態調査』(1994~2014年)の個票データを用い、20 年間における控除の負担軽減効果および再分配効果を計測した。当初、控除の負担軽減効果(軽減額の対総所得比)は高所得層ほど高かった。しかし、経年的には高所得層の優遇が低下しつつあり、近年の負担軽減効果は比例的な構造にある。こうした中、控除の再分配効果は上昇しつつあり、格差是正の役割を高めているが、このことは制度変更による寄与が大きいことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は控除の負担軽減効果と再分配効果について定量的に評価することである。2021年度は『全国消費実態調査』の個票データを用いて、日本の所得税・住民税における控除の負担軽減効果と再分配効果について考察した。また、その成果は年度内に論文としてまとめ、学術誌に公表された。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの取り組みから控除の負担軽減効果は高所得層ほど大きいことが確認されており、今後はこうした特徴がどの仕組みからもたらされているのかについて掘り下げて考察する必要がある。こうした背景には所得税において超過累進税率を採用しているほか、いくつかの控除制度において収入が増えるにつれて適用控除額も大きくなる仕組みを有していることが挙げられる。2022年度は特に収入逓増的な控除、すなわち給与所得控除、公的年金等控除、社会保険料控除に焦点を当てながら、控除の負担軽減効果および再分配効果を定量的に評価する。
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Causes of Carryover |
研究報告に関する旅費等の使用を見送ったために次年度使用額が発生した。次年度の英文校正費等に充当する予定である。
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Research Products
(3 results)