2021 Fiscal Year Research-status Report
インクルーシブ社会に向けた消費者保護法制の経済分析
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21K01541
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
新井 泰弘 高知大学, 教育研究部人文社会科学系人文社会科学部門, 准教授 (20611213)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河村 耕平 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (30787817)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 法と経済学 / 消費者保護 / キャンセル料 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度はキャンセル料を含んだ最適契約モデルに関する考察を主に行った。事業者の最適キャンセル料設定を考えるにあたり、以下の2点が重要となる。① 消費者は購入段階では商品の品質を完全に判別できない、② 契約の事後的な取消に商品の摩耗や返送のための送料等の取消費用がかかる。こうした取消費用は、消費者の負担割合が小さくなると、購入してみて品質が低かったらすぐ取消をする、という消費者の過剰な取消を招き、社会的に不必要な取消費用の発生と、事業者の円滑な取引の阻害が発生する可能性がある。一方で、消費者の負担割合の増加は消費者側からの取消を抑制してしまう。 こうした設定の上で、消費者の情報収集を組み込んだモデルを考察している。具体的には、消費者が一定の費用を支払うことで商品の品質に関する情報を集めることが出来るケースの想定である。現実社会においても、我々はインターネット販売や通信販売を利用する際に、サイトに表示されている口コミや販売業者の情報について事前に調べることがある。こうした消費者の情報収集は、望ましくない取引を事前に防ぐ意味でも重要である。また、消費者の情報収集の程度は、もし取引をキャンセルした場合の費用負担に大きく依存しており、事業者の設定するキャンセル料に大きく左右されることになる。そのため、事業者のキャンセル料設定と、その下での消費者の情報収集構造について理論分析を行っている。 モデルの途中結果については、研究分担者である河村が2022年1月にWINPEC Microeconomics Workshopにて報告しており、現在受け取ったフィードバックを基にモデルの再構築を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は研究の基礎となるキャンセル料に関する分析を行っている。コロナ禍の影響から海外学会への参加や国内の移動が困難であったが、Zoom等を使うことにより研究者同士でのコミュニケーションを密に取りながら研究を進めることに留意した。 進捗状況として、基本的な分析のフレームワークについては完成しつつあり、現在、現実の問題点を反映した上で事業者がどのようなキャンセル料を設定するのか、また、そのキャンセル料に対して消費者の情報収集行動がどのように変化するかについて追加的な考察を行っている。概ね申請書に記載した内容に沿った形で研究は進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、昨年度作成した基礎モデルの完成とその発展を主眼とし、二つ目の目標である好ましくない取引を予防するための費用の適切な配分についても分析を行う予定である。また、昨年度行うことのできなかった海外学会への参加や、国内での研究者間の打ち合わせについても感染状況を鑑みた上で積極的に行い、研究の進捗を加速させていく予定である。 現在構築中の基礎モデルが完成次第、その研究内容を法曹や政策当局者に理解しやすい形で発信していくように試みる予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍に伴い、海外学会への参加が困難だったため、予期していた海外出張費を用いなかった。また、研究基盤整備(I)として購入予定であった専門書籍、施設整備、サバティカルに伴う海外渡航費等に関しては今年度使用する予定である。
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