2021 Fiscal Year Research-status Report
腐敗・汚職の経済理論モデルの構築-経済厚生からのアプローチ
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21K01542
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Research Institution | Takasaki City University of Economics |
Principal Investigator |
溝口 哲郎 高崎経済大学, 経済学部, 教授 (40566890)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 腐敗 / 汚職 / 政府の失敗 / 経済厚生 |
Outline of Annual Research Achievements |
腐敗・汚職は「公から委ねられた権限を個人の利得のために濫用すること」と定義される。つまり官僚などの公人が、裁量的に与えられた権限を最大限利用して、賄賂等の利益を得ることである。
腐敗・汚職が問題視される理由は、国家のビジネスに参入した個人や企業が、権限を持つ官僚や政治家に対して賄賂などの見返りを提供することによって、資源配分に歪みをもたらし、資源配分の効率性を損ねてしまうことにある民間企業が官僚や政治家に賄賂を支払い、その対価として便宜を求める行為である腐敗・汚職は資源配分に歪みをもたらし、経済全体の資源配分の効率性を損ねてしまう。
本年度は、腐敗・汚職に関する最新の経済理論モデルおよび各国経済のケーススタディについて、各種文献より各国の現状を把握し、腐敗がもたらす経済厚生への損害についてのサーベイと考察を行った。サーベイの結果、T. Besley教授による著作"Principled Agent?"(Oxford University Press)における「政府の失敗」が経済厚生と腐敗の関連で重要であることがわかった。すなわち市場インフラを整える際に重要な役割を果たす政府は、政治家や官僚などが立案した経済政策によって、選挙民の意図とは異なる形で自分たちの利益のために裁量的な権限を利用する可能性がある。そのことによって、腐敗等が発生し、経済厚生が損なわれる恐れがある。本年度は、T. Besley教授の著作を幅広く紹介するため、その著作の翻訳等を通じて政府の失敗を防止し、腐敗を防ぐための方策について啓蒙していくことを予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍において現地調査等が難しいために、文献調査等を中心に「腐敗が経済厚生に与える事案」について文献を中心に腐敗が経済厚生に与える影響について、分析を執り行っている。これまでの調査結果を踏まえ、海外査読誌に「外部的な懲罰と効率賃金の上昇が、市場のライセンス獲得時に起こる官僚の腐敗を減少させる効果を持ち、その結果経済厚生を高めることができる」ことを示した論文(Does Efficiency Wage Assuage Corruption?)の修正を行い、投稿を準備している。また政府の失敗の概念と腐敗の問題を取り扱ったT.Besleyの著作についての日本語の翻訳の草稿を作成しており、刊行を予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
各国の腐敗・汚職のケーススタディおよび実証研究のサーベイから得られた腐敗・汚職の要因を分類し、民間企業と官僚の間の利益誘導とそれに伴う腐敗・汚職の問題を取り扱う。そのために先に紹介したT. Besley教授の著作の紹介を行い、政府の失敗の腐敗の関係について、応用を試みる。現在、コロナ禍が継続していることもあり、海外での調査がしにくいため、日本の事例を中心として、適切な文献を収集・分析し、経済厚生を高めるような腐敗防止策を評価するための理論モデルを引きつづき開発していく予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍において、学会主張等が困難となり旅費等が利用できず、その分研究に必要な文献蒐集を行った。
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