2021 Fiscal Year Research-status Report
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21K01543
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
安川 文朗 横浜市立大学, 国際商学部, 教授 (90301845)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 難聴 / リスク / QOL / 公的支援 / 補聴器業界 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、難聴者の直面するリスクの実態について、オンラインを通じた文献検索を実施するとともに、難聴者支援に従事する聴覚障害者情報センターの言語聴覚士および利用者に対する、対面およびオンラインでの聞き取りをおこなった。対象は神奈川県および兵庫県立聴覚障害者情報センターのSTと治療者である。当初計画ではこの聞き取りを実施したうえで、年度内に調査票による難聴当事者と一般高齢者へのアンケートを実施する予定であったが、 コロナ禍による対面での聞き取り調査実施が大きくずれ込んだため、聞き取り結果から難聴者のリスク分類を行うところまでしか実施できなかった。この分類結果から、①日常生活上の安全に関するリスク(警報などに気づかない、テレビ等の気象警報などに気づかないなど)、②社会参加におけるリスク(コミュニケーション相手との意思疎通の不十分さによる誤解や誤判断、人々との対話が疎遠になることでの心理的疎外感など)、③健康上のリスク(医療や福祉サービスにおける指示等の誤理解や誤判断など)といった項目が抽出できた。 いっぽうで、難聴者支援の一環である補聴器業界の近年の動向を、広くリスク環境の低減としてとらえ、その可能性と有効性について検討をした。この検討結果は「難聴者の支援と補聴器ビジネスの新展開」と題して、論文化(共著)して投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、まず難聴者自身および難聴者支援に従事する専門家から、実際に難聴者が直面する多様な状況を聞きとり、整理したうえで、それらの程度と難聴者の属性、また難聴者自身の認知と健聴者の認知との差について質問紙調査で明らかにすることを企図していた。しかし、聞き取りについて、コロナ禍の影響で聞き取り予定の施設が調査受け入れを一時中断したこともあり、専門家に対する聞き取りは対面で1回、オンラインで2回実施するにとどまった。また施設を利用する当事者への聞き取りはオンラインを用いて間接的に実施してもらうことしかできず、そのため質問紙調査の実施が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、オンラインによる800人程度の健聴者と200人程度の難聴者を対象とする質問調査を準備しており、本年5月末から6月にかけて実施予定である。この調査から、難聴者の自己認識と健聴者の客観的なリスク認識を抽出し、さらにその結果から、当該リスクの回避に伴う機会コスト、支援施設の関与等の行政コストを測定し、それが難聴支援の介入によりどの程度変化したかについての2時点観察調査に落とし込むためのサンプリングを行って、来年度中ごろに比較検討を行う予定である。また並行して、聴覚障害者情報センターの協力を得ながら、全国のSTを対象にした質問紙調査を実施して、福祉支援及び制度設計の視点から、難聴者の潜在的リスクを軽減する制度設計の要素を抽出し、制度設計に必要な医療経済的課題と実際の資源配分の在り方を検討する予定である。
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Causes of Carryover |
オンラインによる質問紙調査実施のためその他経費として100万円を執行予定。また支援施設訪問および研究打ち合わせのため、旅費として4万5千円を執行予定。
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