2023 Fiscal Year Research-status Report
集団構成員間の異質性を考慮した集合行為問題の、シェア関数アプローチによる研究
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21K01550
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
上田 薫 南山大学, 経済学部, 教授 (40203434)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | share function approach / destructive contests / equilibrium payoffs / prize function / convexity |
Outline of Annual Research Achievements |
Boston Collageの小西秀男教授及び法政大学の小林教授と行っている集団コンテストにおける報酬制に関する共同研究の成果を共同論文“Prize-Allocation Rules in Generalized Team Contests” として完成させた。投稿したところ改訂後再投稿という判定で好感触を得ているが、改訂作業の過程でプライズの価値がコンテスト参加者たちの努力の投入量に依存して変化する generalized contest に関する文献の再調査を行ううち、経済厚生に関する通常のコンテストとの比較に関する従来の結果の興味深い一般化の可能性を見出した。これは報告者個人の成果である。この発見の基本部分の適用例として、(参加者たちの努力の投入量増加に伴いプライズの価値が低下する)破壊的コンテスト参加者たちの均衡利得水準が通常のコンテストのそれを優越するための十分条件を示す論文を公刊した。この方向での研究成果も、国際雑誌への投稿論文に発展させていくことを目指したい。 研究成果:論文 『破壊的コンテストの厚生分析』 概要:参加者たちの努力の投入量増加に伴いプライズの価値が低下する「破壊的コンテスト」は、プライズの価値がコンテスト参加者たちの努力の投入量に依存して変化する generalized contestの代表的類型のひとつである。シェア関数アプローチの適用により、コンテスト参加者たちの均衡利得水準を標準的コンテストのそれを比較するための式の導出が可能になり、破壊的コンテスト参加者の均衡利得が標準的なコンテストのそれを優越する可能性について、従来よりも一般的な条件を示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Boston Collageの小西秀男教授及び法政大学の小林教授と行っている集団コンテストにおける報酬制に関する共同研究の成果を共同論文の形にしたことは今年度の大きな成果であった。投稿先の反応も良好であったが、報告者の勤務先における業務等の影響で互いに直接会う時間を作ることが難しく、改訂に時間を取られたことで今年度中の公刊には至らなかった。他方で改訂の過程で今後の研究に関するいくつかのヒントを得られたことは収穫だった。特に、generalized contest の一種である破壊的コンテストに関する研究の進展は生産・収奪モデルの集団間紛争への拡張を具体化する上で有用であり、今後もこの路線での論文作成を予定している。また、シェア関数アプローチの産業組織論への応用の進展として、逐次的クールノー寡占(クールノー寡占もgeneralized contestの一種と解釈できる)の新モデルのアイディアも得た。これらに関する論文の執筆・投稿と前述の投稿論文公刊の完遂のため、助成期間の延長を許可して頂いたことを感謝したい。
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Strategy for Future Research Activity |
①個別報酬制の導入に関して:すでに述べた通り、投稿後の改訂を終了した段階である。②災害リスク低下への自発的貢献モデルについて:この方向については大きな進展はなかった。③生産・収奪モデルの集団 間紛争への拡張について:破壊的コンテストモデルとして読み替えるという発展性を見込める方向を見いだせたので、これに沿ったモデル分析を進める。④産業組織論への応用:競争政策上の議論の多くでは継起的寡占の枠組が必要だが、標準的モデルは小売市場では寡占的に価格支配力を行使する流通業者が卸売市場では価格受容者として行動するという非整合性を抱えていた。シェア関数アプローチにより、この問題を克服した新たなモデルによる分析を試みる。
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Causes of Carryover |
2023年度は報告者の勤務先における業務等の影響で、共同研究者との直接交流を含め、外部の研究者との情報交換が十分に行えたとは言い難い1年であった。他方で、年度後半に再雇用の形で大学に在籍できることが決まったことにより、現在の立場に大きな変更が無い形での研究継続の見通しを立てられるようになった。さらに当該事業計画の一環である国際雑誌への論文公刊が実現に向かう最終段階に至り、当初は想定していなかった有望なアイディア(8の③、④で言及)を論文の改訂の過程で得た。これらの事情により、補助事業期間を延長することによって研究発表の機会を増やしながら、国際雑誌への論文掲載の完遂、新たなアイディアによる論文作成等を通じ、当初の目的をより精緻に実現することを目指したいと考えた。 使用予定の内訳:旅費およそ25万円、資料費およそ19万円
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