2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K01558
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
清水 克俊 名古屋大学, 経済学研究科, 教授 (80292746)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 銀行 / 規制 / 行動ファイナンス / 流動性 |
Outline of Annual Research Achievements |
【研究実績の概要】 本研究プロジェクトは,銀行経営者の自信過剰が銀行の資産ポートフォリオ構成に与える影響を理論的・実証的に検証することを目的としている。バーゼルIII規制では,流動性カバレッジ比率(LCR)規制や純安定調達比率(NSFR)規制が導入され,高品質の流動資産の保有が重要視されてきている。金融危機時に預金等の流出が流動資産の保有額を上回ると預金の払い戻しが困難となり,流動性の枯渇現象や不良資産を抱える銀行の経営悪化が生じるため,金融危機がさらに悪化する。バーゼルIIIの流動性規制はこうした問題に対処するために導入された規制である。本研究は,米国のデータを用いて,銀行経営者の自信過剰度が銀行の流動資産比率に与えた影響を中心に計量経済学的手法によって明らかにし,流動性カバレッジ比率規制や純安定調達比率規制などバーゼルIII規制に関する重要な政策的インプリケーションをえようとするものである。 本年度は,仮説を検証するため,計量プログラム(Stata)で統計分析を行い,随時プログラムの修正や拡張を行った。実証分析における主要な推計において,被説明変数は銀行の流動性比率であり,主たる説明変数は銀行経営者の自信過剰指標である。他に,経営者の年齢,性別,自己資本比率等の財務指標をコントロール変数とした。プログラムの細部において,さまざまな調整を行い,ロバストな分析が行えるように修正を行った上で分析した結果,自信過剰な経営者のいる銀行の流動性比率は低く,資金調達コストは高いという結果がえられた。さらに,自信過剰指標が金融危機時の流動性不足の確率に有意に正の影響を与えるという結果がえられた。これらをもとに論文を執筆しながら,分析について細部の調整などをおこなった。また,既存文献の説明や,仮説の説明の部分について検討を行い,それらについても執筆を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現有のデータを用い,さまざまな調整を行うようにプログラムを改良し分析を継続して行っており,仮説と整合的な結果が得られているという意味ではおおむね順調である。また,論文の執筆という点においても順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
厳しいコメントも受け取っており,それについての改善を検討する必要がある。引き続き,計量手法のロバスト性を高めるように,新しい計量手法の適用を検討し,より頑健な実証分析の手法を用いるように改善していく。また,金融危機における対応によって銀行を分類するなどして,より発展的な仮説も検討し,インパクトの高い雑誌に掲載できるように改善を行っていく。
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Causes of Carryover |
予算額が減額されたため、データベースの購入ができなかったため。 国際学会での発表の機会をえることができなかったため。
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