2021 Fiscal Year Research-status Report
ソーシャルキャピタルが企業価値にもたらす影響に関する実証研究
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21K01561
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
宮川 壽夫 大阪市立大学, 大学院経営学研究科, 教授 (30584049)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | コーポレートファイナンス / ソーシャルキャピタル / 企業価値 / 社会的責任 / ESG投資 / 人的資本 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、これまで専ら社会学や政治学の分野で扱われてきたソーシャルキャピタル理論のアイデアをコーポレート・ファイナンス理論に幅広く応用し、ソーシャルキャピタルという資本概念が企業の株主価値に影響を与えるという仮説と問題意識に基づいています。 本研究の目的は、企業が行うソーシャルキャピタルへの投資とその蓄積が社会的な価値を創出し、資本市場における企業の競争優位を拡大させることによって株主価値拡大の予見性を高める、という仮説を多角的に検証することです。 企業の社会的責任や投資家によるESG投資に着目するとともに、エージェンシー理論や情報の非対称性理論を論拠とした従来型の企業行動に対してまったく新しい理論を構築することによって、ソーシャルキャピタルの資本市場における競争優位を明らかにすると同時に、また、このような現代企業の投資意思決定の現実を説明するところに本研究の特徴があります。 具体的には、人的投資や資金調達、利益配分という従来の企業内部の資本構築に着目してきた研究スコープを大きく発展させ、企業が内部ではなく企業の外部において構築するソーシャルキャピタルという資本概念を用いて、その存在を株主価値で測ることとします。 ソーシャルキャピタル(social capital)は、一般的に「社会関係資本」という日本語訳があてられ、各分野で古くから研究されてきたテーマです。それだけに定義も広範でかつ複雑ですが、端的に言えば、人と人、人と組織、あるいは組織と組織とのつながりや関係にはそれ自体になんらかの価値があるという考え方を共通の前提としています。企業においても一般的な社会行動を取る上で、これらの間にはお互いの協調的な行動を促すための規律が暗黙的に働いているという点に着目し、ファイナンス理論への応用可能性を検討する必要があるとの問題意識に基づいています。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は国内上場企業を対象とし、企業財務、株主構成、株価に関するデータを用いて仮説検証を行うことによってその目的を達成します。したがって、文献レビュー、データ収集、データベース構築、統計ソフトによる実証分析というフェーズを踏み、さらに企業と投資家への大規模なインタビューを実施することによって仮説の理論構築と必要に応じた仮説の修正作業を行うというプロセスで進めました。 その中で本年度を第1フェーとし、必要テーマに分かれた段階的な文献レビューと仮説の理論構成について検討を行いました。コロナの問題は依然としてあるものの、本フェーズの遂行に限っては深刻な影響とはなりませんでした。 特にソーシャルキャピタルの定義と機能、経済価値については、近年の萌芽的な理論研究を詳細に検討し、検証可能な仮説の導出を行うことに大きな主眼を置きました。また、ソーシャルキャピタルのメジャメント開発のため、小規模サンプルでいくつかのパイロットスタディを実施し、データの構築にとりかかっている状態です。
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Strategy for Future Research Activity |
小規模サンプルでいくつかのパイロットスタディを継続して実施するとともに、企業、機関投資家との意見交換の場を設け、メジャメントの説明力を現実的なものとすることが課題となります。 また、第2フェーズに進めばデータベースの構築が最大の目的となります。当フェーズにあたって主に必要なデータは、東証上場企業を主体とした母集団における(1)企業財務に関するデータ、(2)企業の株主構成に関するデータ、(3)株価データ、(4)ガバナンス指標データ、(5)ESGデータ等です。
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Causes of Carryover |
(理由) コロナの影響で国内と海外の出張ができなかったこと。また、研究に適合したソフトを検討するのに時間がかかり、PCの導入とともに翌年に回したこと。 (使用計画) 出張は一旦は中止するものの今後可能となれば実行に移します。また、来年度は適切なソフトを探索し、PCとともに購入する計画です。
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Research Products
(1 results)