2021 Fiscal Year Research-status Report
Online Banking and the Financial Inclusion Effects
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21K01564
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Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
永野 護 成蹊大学, 経済学部, 教授 (20508858)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | オンラインバンキング / フィンテック / 投資のリスク選好度 / リスク調整済み収益率 / 金融包摂 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度の当該研究は、マレーシアでの家計アンケート調査を実施し、2つの国内セミナー(招待講演)と2つの国際学会での報告を行った。本研究の初年度は、金融広報委員会(日本銀行情報サービス局)が1960年より実施している「家計の金融行動に関する世論調査」の2007年~2020年個票データの貸与を受け、このデータ整理を行い、実証研究を行った。この個票データを用いて、オンライン・バンキング利用世帯と銀行店舗・ATM利用世帯との間で、金融行動に違いが生じているか否かを実証的に検証した。具体的には、家計の資産面では、毎年の資産運用の実績、資産構成に違いが存在するか否かを確認した。家計の負債面では、オンライン・バンキング利用世帯と銀行店舗・ATM利用世帯との間で、住宅ローンの借入規模(対所得比)、返済額(対所得比)、期限前返済の有無、に違いが生じているか否かを確認した。データ整備と実証分析を進めると同時にCocco (2005)らの家計の金融行動に関する理論モデルを拡張し、本研究の理論的枠組みの強化を進めた。理論モデルでは新たに、オンライン・チャネルと店舗ATMチャネルの、2つの金融チャネル利用の選択の違いにより、個人投資家の投資行動におけるリスク選好度が影響を受けるモデルへ発展させている。本研究では、この理論的枠組みに基づき、個票データを用いて、オンライン・バンキング利用者の証券投資におけるリスク選好度が、銀行ATM利用者のそれよりも、高いことを実証的に明らかにすることを目指している。これらの新たな理論モデルと実証結果を用いて、早稲田大学、近畿大学のセミナー、日本ファイナンス学会、Asian Finance Association年次総会において報告を行った。その後、これらのセミナー、学会で得られたコメントを踏まえ、改訂版のワーキングペーパーを作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
金融広報委員会の「家計の金融行動に関する世論調査」の個票データを研究開始時点で借り入れることができていたため、研究計画初年度は当初の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目以降は、「日経RADAR」の個票データとニッキン『金融名鑑』を用い、「日経RADAR」の回答世帯が居住する区市町村情報と、ニッキン『金融名鑑』の銀行店舗・ATM住所情報をマッチングしたデータを作成する。このデータを用い、東京都62区市町村、神奈川県60市区町村、千葉県59市区町村、埼玉県63市区町村のオンライン利用世帯、銀行店舗・ATM利用世帯の2つの標本グループ間の金融行動の違いを検証する。併せて、1年目に続き、新興国でのオンライン・バンキングの調査を実施する。2年目も同様に、クアラルンプール連邦特別市11地区別に目標回収数4,000世帯のWebアンケート調査を実施し、個票データと銀行店舗データを11地区ごとにマッチングする。同国の人口構成はマレー系66%、中国系20%、インド系8%、その他から構成され、宗教人口は、イスラム教徒61%、仏教20%、その他19%から構成される。金融リテラシーの高さ以外に、民族別、宗教別にオンライン・バンキング利用の金融包摂効果、特に、普通銀行とイスラム銀行との間でのオンライン・チャネルの金融包摂効果の違いを確認する。研究成果をバンク・ネガラ・マレーシア・イスラム金融研究所から、ディスカッション・ペーパーとして公開を依頼する。
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Causes of Carryover |
マレーシア現地家計アンケート調査において、5社から事前見積もりを取得し、最低金額を提示した調査会社に委託したため。翌年度分への繰越金額は、初年度と同様に実施する現地家計アンケートの標本数を増加させることに用いる。
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