2022 Fiscal Year Research-status Report
Online Banking and the Financial Inclusion Effects
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21K01564
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Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
永野 護 成蹊大学, 経済学部, 教授 (20508858)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | オンラインバンキング / 家計の金融資産構成 / 投資リスク選好度 / 住宅負債 / 家計ファイナンスのライフサイクル・モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度の当該研究は、ワーキングペーパーをSSRN(Social Science Research Network)から公開し、3つの国際学会での報告と、2度目のマレーシア国内での家計調査アンケート調査を実施した。令和3年度から4年度にかけ本研究は、金融広報委員会(日本銀行情報サービス局)の「家計の金融行動に関する世論調査」の2007年~2020年個票データを用い、オンライン・バンキング利用者の、証券投資におけるリスク選好度が、銀行ATM利用者よりも、高いことを実証的に明らかにした。令和4年度は、この研究成果を、Japan Finance Association & Pacific-basin Finance Journal Special Issueコンフェレンス、The 17th East Asian Economic Association 2022、Vietnam Simposium in Banking and Financeで報告した。その後、これらのセミナー、学会で得られたコメントを踏まえ、ワーキングペーパー第3版を作成した。また、令和4年度は、2度目のマレーシアでの家計調査アンケートを行い、調査結果を集計した上で令和3年度個票データとの比較分析を行った。過去2年度分の家計個票データを用い、クアラルンプール連邦特別市11地区別に、銀行店舗数データをこの個票データにマッチングし、2カ年分の個票データと銀行店舗データの統合データセットを作成した。この家計調査の個票データと銀行店舗数データを用い、新興国マレーシアでのオンライン・バンキング利用者の、銀行ATM利用者との金融行動の違いの分析を実証的に行った。ワーキングペーパーの公開以外に、日本の家計の個票データを用いた分析結果を、金融ビジネスマン向け一般誌季刊『個人金融』に寄稿することで、研究成果を業界へ公開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、すでに日本の家計個票データを用いたワーキングペーパーは、過去2年度で計5回の国際学会で発表し、多方面からの評価と修正すべきコメントを得た。これらの評価とコメントは、これまでに改訂版ワーキングペーパーに反映することができた。本研究が、順調に進捗している理由は、日本銀行からの個票データが令和3年度上半期にすでに分析可能な状況にあったこと、ならびに先行研究調査が令和4年度までに一定程度進捗していたためである。日本とマレーシア家計の金融行動に関する比較分析では、日本円の対USドルレートが大幅に下落したため、クアラルンプールでの現地調査委託費が当初の見積もりよりも大幅に割増しとなった。他方、令和3年度に現地での委託調査を行った現地調査会社に、令和4年度も再委託を行ったが、現地調査は当初計画したスケジュール通りに実施されている。令和3年度、4年度に委託を行った現地調査会社Vodus社が、家計の標本をゼロから収集するのではなく、予め所得階層別、地域別、世帯主の職種別にサンプルを確保していることも、現地調査が順調に進捗した理由のひとつである。令和3年度の調査に比べ、令和4年度は、回答者である家計側もモバイル端末を用いる回答に慣れていたため、以前よりも迅速に個票データの収集が進んだ。かかる経緯により現地調査が順調に進捗したため、これらの家計個票データを用いた分析もおおむね順調に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は、日本の家計個票データを用いて行った分析結果のワーキングペーパーをさらに改訂し、国際学術誌に投稿することを目指す。またマレーシアでの現地調査は今年度が最終年度であり、12月末までにこの最終調査を完了させる。この3カ年のマレーシアの家計個票データを用い、分析を行うことで、年度末までに本研究2つ目のワーキングペーパーを作成する。この2つ目の日本とマレーシアの家計の個票データを用いる国際比較研究成果は、ワーキングペーパーを対外公表した上で、令和6年度に国際学会で報告を行う。複数の国際学会で報告し、コメントを収集した上で、令和6年度までに、国際学術誌へ投稿し、掲載を目指すことで研究成果の国際的な発信を行う。また、過去2年間は、渡航制限のため、マレーシア国内での、家計インタビューが行えていなかったため、令和5年度はクアラルンプールにおいてこれを実施する。アンケート調査を回答した家計から、ランダムに20~30世帯を抽出し、アンケート調査で明らかにすることができなかった点、および本研究の仮説について、現地で定性情報を収集する。
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Causes of Carryover |
マレーシアでの現地調査が費用的に割増しとなったことで、令和4年度調査に関してのみ、標本数を1割減として、現地調査会社との委託契約を行ったため、使用計画額と拠出額に差が生じている。残額の使用計画は、令和5年度の最終調査時の標本数(個票調査回収集)を、増大することで埋め合わせる。
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