2021 Fiscal Year Research-status Report
わが国家計の支払い手段の選択と金融資産需要について
Project/Area Number |
21K01566
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
藤木 裕 中央大学, 商学部, 教授 (90293969)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | キャッシュレス決済 / 現金需要 / COVID-19 |
Outline of Annual Research Achievements |
「日常的な支払いにおいてはキャッシュレス化が進展する中で、現金需要の総量が拡大しているのはなぜか」。学界で広く検討されている仮説は、日常取引のための現金需要はキャッシュレス化のため減っているが、貯蓄目的のための現金需要(以下、保蔵需要)が増えている、というものである。本研究の目的は、この仮説を踏まえ、家計の現金保有残高を、日常取引のための現金需要と、保蔵需要にわけて実証的に検討することである。 こうした実証的検討にあたっては、個人の現金保有残高を、日常取引のための現金需要と保蔵需要に分けて調査し、当該個人の金融リテラシー、所得、年齢、性別などの属性情報と合わせて検討する必要があるが従来利用可能だった日本のデータではこうした情報は得られない。本研究の第一の独創性は、これらの情報をアンケート調査で集める点にある。本研究の第二の独創性は、「キャッシュレス・消費者還元事業」、COVID-19感染拡大が家計の現金保有残高や家計のキャッシュレス化ににいかなる影響を与えたかアンケート調査で情報を集める点にある。日本のキャッシュレス化の研究においては、「キャッシュレス・消費者還元事業」、COVID-19感染拡大による社会的距離確保の要請から生じた現金取引からキャッシュレス取引への移行、といった近年の特殊事情と、これまでの徐々に進んできたキャッシュレス化の動きを分けて考える必要があるからである。こうした目的のためには、「キャッシュレス・消費者還元事業」の前、「キャッシュレス・消費者還元事業」中でCOVID-19感染拡大前、「キャッシュレス・消費者還元事業」終了後でCOVID-19感染拡大期、の3時点における同一個人の支払い手段選択の3時点での同一個人の支払い手段のデータを独自に構築する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目の計画にあった通り、インテージ(株)のSCI「決済手段データ」に参加しているモニターにアンケートを行った。同社はモニターから、1週間の買い物の支払い手段、金額、場所のデータを集めている。本研究では、同社のモニターから、日常取引のための現金需要残高、保蔵需要残高、金融リテラシーなどの情報を追加で聴取した。さらに、聴取するモニターを、「キャッシュレス・消費者還元事業」の前後で支払い手段の選択に関する調査に参加したモニターとすることで、「キャッシュレス・消費者還元事業」の前、「キャッシュレス・消費者還元事業」中でCOVID-19感染拡大前、「キャッシュレス・消費者還元事業」終了後でCOVID-19感染拡大期、の3時点における同一個人の支払い手段選択を比較可能となったため、個人の属性を踏まえたうえで、「キャッシュレス・消費者還元事業」前後、COVID-19感染の前後のキャッシュレス化の進捗を確認できる体制が整った。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度には、収集したデータを用いて、決済手段の需要関数を支払い金額別、支払い場所、年齢、性別、金融リテラシーなどの情報から推計すること、日常取引のための現金需要と保蔵需要を推計することを試みる。分析結果を論文の初稿にまとめ、COVID-19の感染状況が改善した場合は、本分野に詳しいカナダ銀行の研究者とともに8月にカナダで開催される学会のセッションで発表予定である。これ以外にも、国内学会でも発表し、コメントを得ることで論文完成に接近し、2023年の学術雑誌投稿につなげていきたい。
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