2022 Fiscal Year Research-status Report
Effects of exchange rate fluctuation and global shocks on exporting firms' dynamic behavior
Project/Area Number |
21K01567
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Research Institution | Tokyo Keizai University |
Principal Investigator |
小川 英治 東京経済大学, 経済学部, 教授 (80185503)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 輸出企業の動学的行動 / 為替相場変動 / グローバルショック / 調査票情報データ |
Outline of Annual Research Achievements |
輸出企業の動学的行動に関する研究の近年における新しい発展を踏まえて、本研究では、為替相場の変動及び世界金融危機やコロナショックなどのグローバルショックが輸出企業の動学的行動にどのような影響を及ぼすかについて理論的・実証的に分析することとしている。 本研究の目的(①輸出企業の動学的行動に影響を及ぼすと想定される埋没参入費用、需要学習を織り込んだ統合理論モデルを構築する。②その理論モデルに基づいて、為替相場変動が輸出企業の行動にどれほどの影響を及ぼすかを実証的に分析する。③世界金融危機やコロナショックなどのグローバルショックが輸出企業の動学的行動に及ぼす影響を実証的に分析する。)の内、令和4年度においては、経済産業省より提供いただいた「企業活動基本調査」と「海外事業活動基本調査」の調査票情報データを利用して、日本企業が海外市場に現地法人の設立する際に、需要の不確実性が影響を及ぼすことを説明できる理論モデルと実証分析結果を経済産業研究所「為替レートと国際通貨」研究会において発表した。また、当該理論モデルを発展させ、進出先市場における日系同業他社からの需要学習を踏まえた理論モデルを構築し、財務省財務総合政策研究所・京都大学経済研究所共同研究成果報告書「マクロ経済モデル等を活用した日本の財政経済に関する分析 研究報告書」)にて "A Tractable Model of Multinational Firms' Internationalization Decisions and Demand Learning" を報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究遂行において、Ecole Polytechniqueで在外研究を行った谷直起氏(財務省大臣官房総合政策課、京都大学経済研究所)に共同研究者として理論的・実証的研究の両面において本研究に協力していただいていることが、進捗状況が順調である理由の一つである。また、経済産業研究所を通じて経済産業省から「企業活動基本調査」と「海外事業活動基本調査」の調査票情報データを提供していただいていることも実証的分析を遂行するに際して大きく貢献しており、令和4年度には経済産業研究所での発表等を実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は、前年度において埋没参入費用、需要学習を考慮に入れて構築したモデルについて、日本企業の海外事業活動(海外現地法人の売上高や企業規模の拡大や親会社との企業内貿易の推移)を明示的に加味することにより、発展させる。そして、経済産業省の「企業活動基本調査」及び「海外事業活動基本調査」の調査票情報データを用いて、輸出企業が海外現地法人を設立した後の生存・撤退戦略について、生存期間分析(Duration model)を行う。 そして、上記モデルに基づいて、パラメーターの構造推定を行う。構造推定に際して、現地子会社が進出先の外国市場で自社の需要レベルを学習することを想定する。その上で、需要学習プロセスの違いが企業の外国市場での生存・撤退戦略にどのような違いを及ぼすかを分析する。構造推定により得られたパラメーターに基づいて精緻化された統合理論モデルを利用して、外的ショックに対する日本企業の行動に関してシミュレーション分析を行う。為替レート変動や経済連携協定発効による貿易コスト低下のほか、世界金融危機時の世界的な総需要収縮と金融機関の機能不全による流動性危機やコロナショック時の総需要蒸発とグローバルサプライチェーンの寸断による総供給収縮及び世界各国の経済政策不確実性に注目する。これらの分析によって得られた結果及びマクロ経済政策・貿易政策に対するインプリケーションを取り纏め、研究成果の発表を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大のコロナ禍において、当初予定していた出張に出かけられなかった上、専門的知識の提供が受けられなかったことから、旅費や人件費・謝金の執行ができなかった。今年度においては、前年度の未使用額を利用して、できるかぎりこれらを実施することを予定している。一方、「企業活動基本調査」と「海外事業活動基本調査」の大量の調査票情報データを利用した実証分析に耐えられるようハード面・ソフト面の設備を必要に応じて拡張することも予定している。
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