2021 Fiscal Year Research-status Report
国債市場の価格と流動性:財務省の追加供給との連関性
Project/Area Number |
21K01568
|
Research Institution | Nishogakusha University |
Principal Investigator |
戸辺 玲子 二松學舍大學, 国際政治経済学部, 講師 (90647281)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 国債追加発行 / 国債流通市場 / 流動性 / レポ取引 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、財務省による国債供給が与える市場への影響について、国債追加発行時に生じる価格変化(オークション・サイクル)に着目し研究をおこなった。国債市場の価格と流動性に影響を与える政策として、中央銀行による大規模資産購入が注目されているが、政府や中央銀行による供給面の政策も同時に実施されている。この流動性の補完が市場にどのようなインパクトをもたらすのか、先行研究のサーベイを財務総合政策研究所フィナンシャル・レビュー146号に記した。また、欧米の先行研究で分析されている、国債追加発行の入札前後に観測される「オークション・サイクル」と呼ばれる逆V字型のイールド変化について日本国債市場のデータを用い、実証研究をおこなった。日本ファイナンス学会第29回大会における報告では、逆V字型のイールド変化が我が国でも観測されることを示した上で、新発債の追加発行と流動性供給入札による既発債の追加発行の効果の相違について分析をおこなった。金額当たりの価格への影響は既発債の方が大きいという結果であった。2021年度日本金融学会秋季大会では、逆V字型のイールド変化について、リスク調整行動と需給バランスの両面から説明することを試みた。より詳しくは、先行研究でオークション・サイクルの要因として挙げられているプライマリーディーラーのリスク調整行動だけでなく、実際の入札における需給不均衡も価格変化の要因となるという仮説に基づき、両者が価格変化に与えるタイミングを考慮しながら分析した。実証分析では、逆V字型のイールド変化は、入札前はディーラーのリスク回避行動が影響し、入札後は需要の強さによって形成されることを示した。中でも、入札後のイールド変化の大きさは、オークションの応札倍率や落札者の最大・平均利回り較差といったオークションの需要の強さを示す指標に比例することを示した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通りデータの整備を終え、分析をおこなう段階まで到達した。初期段階ではあるが分析結果について学会で報告をおこなった。
|
Strategy for Future Research Activity |
2021年度に実施した国債追加供給前後のイールド変化に関する分析結果を踏まえ、2022年度は、国債レポ市場における約定レートや流動性への影響について、さらに分析し、現物市場とレポ市場の関係性について明らかにする予定である。イントラデイ・データが入手可能な国債レポ市場を分析対象に加えることで、国債市場の需給状況がより詳細に観察できる。また、危機下における国債の価格・流動性に関する分析についても併せて実施する。新型コロナ・パンデミックが与えた国債市場への影響について、国債フェイル件数の増加した2020年上半期に特に注目して分析をおこなう。欧州金融危機や9.11直後の国債市場の混乱について分析をおこなった先行研究を参考にし、その類似点・相違点を明らかにする。特に、財務省の追加供給や中央銀行の国債貸出が市場の混乱を抑える力をもつのか、現物国債の価格やレポ貸借料を分析することで明らかにしたい。
|
Causes of Carryover |
新型コロナ・パンデミックの影響で、海外学会が中止、またはオンライン開催となり、予定した海外学会出張ができなかった。未使用額は、次年度以降の出張費等として有効に使用する予定である。
|
Research Products
(3 results)