2021 Fiscal Year Research-status Report
A dynamic general equilibrium analysis of macroeconomic problems in an ultra-low interest rate environment
Project/Area Number |
21K01577
|
Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
中村 恒 一橋大学, 大学院経営管理研究科, 教授 (80418649)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 超低金利、利上げ / 量的緩和.量的引き締め / 衝動・自己制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
世界経済は2008年以降のグローバル金融危機を経た上で2020年からはCOVID-19問題や米中貿易摩擦の悪化を経験し、先進国を中心に超低金利が長期化して市場経済が大きく歪められた.特に日欧米を中心とした歴史上未曾有の量的緩和が政府の累積財政赤字や中央銀行のバランスシートを肥大化させ、政府・中央銀行の市場介入が過剰化している.しかし2021年後半から欧米でCOVID-19問題がピークを越え始めると、サプライチェーンショックやロシアのウクライナ侵攻と相俟って、世界的に物価が上昇し、2022年には欧米や新興国を中心に利上げや量的引き締めが実施され始めている.一方で日本では対照的に金融緩和が継続され、結果として急速な円安が生じている. 本研究の目的は、これらの超低金利・利上げ局面でのマクロ経済問題を巡って、金融摩擦や非期待効用によって特徴付けられる動学一般均衡の資産価格モデルを構築することを通じて、(1)資本市場とマクロ経済の相互関係を数値解析的に明らかにし、(2) マイナス金利や電子マネー導入、ドルスワップラインといった超低金利・利上げ局面での経済政策を評価することである. 具体的に、2021年度は本科研費プロジェクトの初年度にあたり、モデルの構築を行なった.特に量的緩和による中央銀行のバランスシートの肥大化とその解消の効果を分析するために、量的緩和に関する中央銀行の衝動とバランスシート効果を最適確率制御問題としてモデル分析している.そこでは中央銀行に量的緩和の衝動が存在することが無リスク金利や市場のリスク価格を引き上げ得ることが理論的に示された.その上で量的緩和による超低金利が生じ得る.さらに肥大化したパランスシートを解消するためには、市場経済が十分に回復していることが必要となり、もし回復していない場合には再び量的緩和が必要となるような悪循環を引き起こし得ることも示された.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
モデル構築は順調に進み研究は順調に進展している.その一方で、コロナ禍において国内外での研究出張が全てキャンセルされたことから、研究支出計画が変更になり、十分な研究討論の機会が制約された.
|
Strategy for Future Research Activity |
モデルの構築をさらに推進し、国内外の国際学会で論文を発表し始める予定である.可能な限り国内外の出張を再開し、対面での活発な研究討論を行いながら、研究成果を国際的に広く社会に発信し、同時に論文の改善に役立てる予定である.
|
Causes of Carryover |
コロナ禍で国内外の出張計画が全て中止されたことが理由である.コロナ問題が安定化し次第、国内外の研究発表・研究討論について研究支出計画を再開する予定である.
|