2022 Fiscal Year Research-status Report
確定給付年金の積立金の投資効率評価 ~エージェンシー問題と認識バイアス~
Project/Area Number |
21K01578
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中島 英喜 名古屋大学, 経済学研究科, 准教授 (90510214)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 政策ポートフォリオの選択 / 政策ポートフォリオ選択後の診断 / 平均・分散効率性 / 期待値の評価値と真値の乖離 / 効率性の過大評価 / Bayes推定 / Black and Litterman |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は厚生年金保険等の確定給付型年金制度の積立金運用に関して、制度運営者の意思決定を定量評価してその合理性を問うものである。そのため下記の3目標を設定した。①まず制度運営者の意思決定に関する限られた公開情報を用いて、外部の専門家が制度運営者の意思決定を一貫して定量評価できる手法を検討する。②次に厚生年金保険等のケースにこの評価手法を適用する。③そして意思決定の問題点を整理し、その原因を制度や運営者の認識バイアスの観点から検討して改善策を提案する。2年度目である今年度は、上記③の意思決定の問題点の中で最重要の一つとしてよく知られた下記の問題を先行的に取り上げた。 積立金運用に関する標準的な意思決定では、投資対象を少数の資産クラスにカテゴライズしてこれらに対する資金配分計画(政策ポートフォリオ)を決定する。その重要性はBrinson等(1986)以降広く知られている。機関投資家の多くは、この計画を標準的な投資理論に従い投資リターンの平均・分散効率性に基づいて定めている。しかしその結果は、各クラスのリターンの期待値評価の僅かな違いに過敏に反応する。さらに選択後の計画診断の適切な方法も知られていない。 Bayes推定を利用したBlack/Litterman(1991、1992)の方法は最初の問題の抑制に有効だが、政策ポートフォリオ選択への適用には幾つか困難な問題がある。そこで本研究ではBayesの考え方に基づきつつ、彼等とは異なる代替的な方法を考えた。この方法は、期待値評価で必然的に生じる誤り(真値との乖離)とこの評価値の下で最適化したポートフォリオの効率性の過大評価を明示的に意識する。これにより、経験的に妥当と考えられる少数の緩やかな情報を加味することで、実質的な効率性を維持・改善しつつ先験的に妥当な政策ポートフォリオを選択し、選択後の診断も同じ基準でシームレスに実行できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
感染症対策の中、自身の健康上の問題が新たに分かったことから長距離の移動を引き続き見合わせた。このため当初の計画を少し修正し、移動を要さない作業や課題を先行的に進めた。これにより分量的には概ね当初計画に準じた進捗が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の「研究実績の概要」に述べたように、本研究は3段階で進める予定である。今後は、①定量評価のフレームワークの整備はある程度目途が付いているので、②の段階に備え、適用対象となる機関投資家の選定と必要なデータの入手を進める予定である。しかし自身の健康上の問題が出たこともあり、今後もしばらく感染症対策で長距離の移動を見合わせる予定である。過年度に続き移動を要さない作業を優先することで、作業分量として当初計画に準じた進捗を維持する予定だが今後の進捗にはやや不安も残る。場合によっては公共交通機関によらない移動も検討する。
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Causes of Carryover |
感染症対策の中、自身の健康上の問題が分かったことから前年度以上に慎重な生活となった。このため前年度に続き都府県をまたぐ移動を見合わせた。これに伴い当初の計画を修正し、移動を要さない作業や課題を先行的に進めた。 具体的には、まず本研究において注意を要する発展的な課題である「グローバル市場における最小分散株式ポートフォリオ」の定量分析を1年目に優先して行った。この分析は、出張を行わずに従来用意していた機材やデータを使って実行できた。さらに今年度は、本研究の3目標の内、③意思決定の問題点の中で最重要なものの一つとしてよく知られた問題「期待リターンの評価値に対する政策ポートフォリオ選択の過敏性」を先行的に取り上げた。これは専ら理論的な考察と検討によるものであり、自身の移動を極力控えつつ使用する機材やデータも前年度に続き従来用意していたもののを活用して研究を進めることができた。これにより支出を最小限に抑えて次年度以降に必要な支出に備えることとしたため、相当の次年度使用額が生じた。
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Research Products
(1 results)