2023 Fiscal Year Research-status Report
慢性的な低インフレ下におけるマクロ経済と金融政策に関するマクロ実証分析
Project/Area Number |
21K01579
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
柴本 昌彦 神戸大学, 計算社会科学研究センター, 教授 (80457118)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | インフレ率 / 金融政策 / マクロ実証分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、①循環的・持続的なインフレ率の変動要因、②インフレ率の変動要因が経済に与える動学的因果効果、③金融政策の期待管理の役割を実証分析する。令和5年度に行った具体的な研究内容は、以下の通りである。 (1)①に関し、日本のトレンドインフレの計測に関する実証分析を行った。研究成果に基づいて学術論文を作成し、成果の公表を行った。また、現在、別の研究成果に基づいて学術論文を作成中である。 (2)②に関し、将来のインフレ圧力の動学的因果効果を推定するための時系列モデル(構造型ベクトル自己回帰モデル)を構築し、日本とアメリカのデータを用いて定量的に分析し、国際比較を行った。研究成果に基づいて学術論文を作成し、成果の公表を行った。更に、国際シンポジウムでの成果報告を行った。現在、研究報告の機会を検討するとともに、査読付き国際雑誌に投稿するための準備を行っている。 (3)低金利環境下の金融政策効果、及び、フォワードガイダンスが金融市場・実体経済に与える動学的因果効果を分析するため、データセットの構築、分析モデルの構築、プログラム作成を進めた。現在、分析結果の整理を行っている。 本研究課題で提案する実証フレームワークによって、慢性的な低インフレ・デフレがマクロ経済にどのくらい深刻な影響を及ぼしているのか、金融政策がマクロ経済・物価安定にどの程度寄与しているのかを定量的に明らかにできることが期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、①循環的・持続的なインフレ率の変動要因、②インフレ率の変動要因が経済に与える動学的因果効果、③金融政策の期待管理の役割を実証分析する。具体的な研究内容に関して、おおむね当初の予定通りに進展していると判断している。 研究課題①に関し、研究成果に関する学術論文「日本のトレンドインフレの計測:共和分アプローチ」を作成し、国民経済雑誌第227巻第5号で公表を行った。また、現在、別の研究成果に基づいて学術論文を作成中である。 研究課題②に関し、成果報告でのWilliams CollageのKenneth N. Kuttner教授らからの意見交換に基づきRIEB Discussion Paper DP2023-04として公表した学術論文の修正を行った。 研究課題③に関し、低金利環境下の金融政策効果、及び、フォワードガイダンスが金融市場・実体経済に与える動学的因果効果を分析するため、当初の予定に沿って、データセットの構築、分析モデルの構築、プログラム作成を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初予定していた研究計画に沿って推進する。 研究課題①のトレンドインフレ率の計測に関する分析に関して、国際査読付き雑誌への投稿の準備を進める予定である。 研究課題②に関して、セミナー及び学会報告等での成果報告を行い、国際査読付き雑誌への投稿の準備を進める予定である。 研究課題③に関して、低金利環境下の金融政策効果を検証するためのモデル構築、及び、フォワードガイダンスが金融市場・実体経済に与える動学的因果効果を分析するための実証モデルの構築を行う。具体的には、データセットの構築、分析モデルの構築、プログラム作成を進めるとともに、実際のデータを用いて定量的に分析を行う。研究成果に基づいて学術論文を作成し、セミナー及び学会報告等での成果報告を行う。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の状況が改善しない中で国内外のセミナー及び学会報告等が限定されていた状況が続き、他の研究者との意見交換を行う場への参加が限られていた時期が研究実施時期と重なっていた。その分の使用額が次年度に順に繰り越されている状況が続いている。ただし、この点に関しては昨年度には大きく改善された。今年度は、社会状況と照らし合わせつつ、改善していくものと期待される。
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