2023 Fiscal Year Research-status Report
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21K01585
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
山嵜 輝 法政大学, 経営学部, 教授 (60633592)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 主観的確率分布 / オプション / 静的複製 / 非線形ペイオフ / 通貨プレミアム / カバーなし金利パリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度は二つの研究を進めた。一つ目は、昨年度からの継続研究として、非線形ペイオフの主観的確率分布の推定手法の開発および実証研究である。具体的な非線形ペイオフとして、オプションのペイオフ、効用関数、およびプライシング・カーネルを扱った。オプションのペイオフの主観的確率分布の推定では、ブラック・ショールズ・モデルを仮定して、ストラドルの主観的確率分布が正確に復元できることをモンテカルロ・シミュレーションによって確認した。実証分析として、S&P500のオプションデータに基づき、冪型および指数型効用関数とそれらに伴うプライシング・カーネルの主観的確率分布の推定を行った。さらに、主成分回帰分析を用いて、効用関数の主観的確率分布の歪度がS&P500の将来のリアライズド・ボラティリティの変動を有意に説明できることを明らかにした。研究成果をまとめた論文を作成し、現在国際学術誌に投稿中である。 二つ目の研究は、通貨リスク・プレミアム(Currency Risk Premium)の推定に関する研究である。カバーなし金利パリティ(Uncovered Interest Parity)は通貨リスク・プレミアムを反映していないため、その関係が成り立たないことが実証分析において知られている。本研究では、主観的確率分布の推定手法を応用して、事前の通貨リスク・プレミアムを定式化し、外国為替レートの変動を説明する新しい関係式を導出するとともに、主要11カ国の通貨の外国為替レートに対して実証分析を行う。現在、理論研究が終わり、実証分析に必要な各国の株価指数のオプション・データを購入し、データ整備および分析の準備をしている最中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和5年度には、1本の論文を国際学術誌に掲載することを目標にしていたが、投稿した論文が掲載を拒否された。そのため、論文を大幅に修正して別の学術誌に再投稿したが、この作業により昨年度初めの計画に比べて進捗がやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
国際学術誌に一度掲載拒否された論文は大幅に修正した後、インターネット・アーカイブのSSRN(Social Science Research Network)に“Subjective Probability Distributions of Nonlinear Payoffs: Recovering Option Payoff, Agent's Utility, and Pricing Kernel Distributions”のタイトルで公開しており、現在は国際学術誌に投稿中である。まずはこの論文の国際論文誌への掲載を目指す。 また、令和5年度後半に着手した通貨リスク・プレミアムの推定に関する研究を完成させる。昨年度、科研費でオプション取引に関するデータベースを購入し、実証分析に必要な世界11カ国の株価指数のオプション・データが利用可能になった。オプション・データを実証分析で使用するには、数段階の加工(インプライド・ボラティリティやインプライド配当率の計算、スマイル・カーブの推定等)が必要になるので、まずはデータの整備を進める。次に、既に導出している外国為替レートの変動を説明する関係式を用いて、各国の通貨リスク・プレミアムを推定し、フォワード・プレミアム・パズル(Forward Premium Puzzle)の解明を試みる。また、導出した関係式を、古典的なカバーなし金利パリティおよび相対的購買力平価と比較することで、説明力の高さを検証する。最後に研究成果をまとめ、国内で口頭発表をするとともに、国際学術誌に投稿する。
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Causes of Carryover |
海外業社が提供するデータベースを購入するために科研費の前倒し申請をしたとき、円安・物価高を懸念して多めの金額を申請したため、予算が余り、次年度使用額が生じた。 次年度使用額152,401円は、論文投稿費、英文校閲費、図書費に使用する計画である。
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Research Products
(1 results)