2021 Fiscal Year Research-status Report
Comparative Empirical Research on the Economic Effects of the Lehman Brothers Collapse and COVID-19 Pandemic
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21K01590
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
英 邦広 関西大学, 商学部, 教授 (40547949)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | リーマン・ショック / コロナ・ショック / 金融市場 / グランジャーの因果性 / 経済的影響 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度では、まず、リーマン・ショックとコロナ・ショックの経済的影響を比較検証するために、生産規模 (実質GDP)、労働環境 (完全失業率)、金融市場 (日経平均株価指数) を用いて各ショックがどの程度継続し、元の水準に戻るまでにどの程度時間が必要であったかについて考察をした。その結果、リーマン・ショックについては、3年程度の時間をかけて実質GDPと完全失業率が元の水準に戻り、4-5年程度の時間をかけて日経平均株価指数が元の水準に戻ったことが分かった。コロナ・ショックについては、2021年9月1日時点で得た情報を基に考察した所、回復途中であることが分かった。次に、新型コロナウイルス感染症者数と業種別日経平均株価 (陸運、海運、空運) の関係をグランジャーの因果性を用いて、新型コロナウイルス感染症者数の公表によって日経平均株価指数がどのような影響を受けたかを検証した。グランジャーの因果性分析の対象期間としては、2020年1月16月から2020年1月18日までの分析期間と2020年1月16月から2020年7月16日までの分析期間となっている。また、分析には、新型コロナウイルス感染症者数、業種別日経平均株価指数、外国為替レートのデータを用いている。得られた結果を以下にまとめる。1番目に、新型コロナウイルス感染症者数から陸運業種の日経平均株価に対してグランジャーの因果性が支持されないことが確認された。2番目に、新型コロナウイルス感染症者数から海運業種の日経平均株価に対してグランジャーの因果性が支持されないことが確認された。3番目に、新型コロナウイルス感染症者数から空運業種の日経平均株価に対してグランジャーの因果性が支持されないことが確認された。4番目に、外国為替レートから業種別日経平均株価に対してグランジャーの因果性が支持されることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度では、リーマン・ショックとコロナ・ショックの経済的影響を比較検証するために、生産規模、労働環境、金融市場におけるデータを用いて各ショックがどの程度継続し、元の水準に戻るまでにどの程度時間が必要であったかについて考察をした。また、新型コロナウイルス感染症者数と陸運・海運・空運の業種別日経平均株価指数の関係をグランジャーの因果性を用いて、新型コロナウイルス感染症者数の公表によって日経平均株価指数がどのような影響を受けたかを検証した。これらの考察・分析結果から、コロナ・ショックでは景気後退時に予想される金融市場の反応とは異なっていることが分かった。本研究では、次の2点について明らかにすることを目的としている。1)リーマン・ショックとコロナ・ショックが金融市場と実体経済に対しどのような影響を与えたか。2)ショック後に実施された経済政策が金融市場と実体経済に対しどの程度有効であったのか。当該年度では、1)について、実質GDP、完全失業率、日経平均株価指数の推移から明らかにすることができ、また、計量経済学の手法を用いて新型コロナウイルス感染症者数の公表と業種別日経平均株価指数の関係について分析した結果、予想の観点では新型コロナウイルス感染症者数の変化が業種別日経平均株価指数の変化に影響を与えていたことは確認できなかった。そのため、新型コロナウイルス感染症者数の情報以外である政府による積極的な財政政策や日本銀行による金融緩和政策による内容が金融市場に直接的もしくは間接的に影響を与えた可能性がでてきた。上記については、研究計画で予定していた作業であるため、現時点では、「おおむね順調に進展している。」を選択した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、1)リーマン・ショックとコロナ・ショックが金融市場と実体経済に対しどのような影響を与えたか、2)ショック後に実施された経済政策が金融市場と実体経済に対しどの程度有効であったのかについて、明らかにすることを目的としている。研究期間の1年目に、1)について、実質GDP、完全失業率、日経平均株価指数の推移から明らかにすることができた。今後は、2)における政府による積極的な財政政策や日本銀行による金融緩和政策が金融市場や実体経済に対してどのような影響を与えたのかを考察・分析していく。財政政策では、給付・支援・助成・補助金とポストコロナに向けた投資 (特別定額給付金、持続化・家賃支援給付金、雇用調整助成金、事業再構築補助金、Go To イベント、産業雇用安定助成金、小規模事業持続化補助金、IT導入補助金など) が考えられ、予算規模に関しては財政支出40兆円、事業規模73.6兆円が政府によって決定された。これは、リーマン・ショック後の経済危機対策での財政支出や事業規模よりも大きな金額となっている。今後も財政的な救済・支援は継続すると考えられる。また、金融政策では、米ドル資金供給オペレーションの導入、民間企業債務を活用した新たなオペレーションの導入、長期国債の買い入れ増額、企業金融支援特別オペレーションの導入、固定金利方式の共通担保資金供給オペレーションの導入などの資金供給が考えられ、これらはリーマン・ショック後よりも手厚い資金供給方式となっている。今後はこうした財政政策・金融政策の影響を考察・分析し、研究を推進していく。
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Causes of Carryover |
2021年度においても国内外の新型コロナウイルス感染症の拡大が落ち着かず、国内の緊急事態措置に基づく要請がされていたため、国外だけではなく、国内の学会・研究会・研究打合せなどによる出張ができず、計画的な旅費の使用ができていない。海外の新型コロナウイルス感染症の拡大により、国内向けの半導体や電子部品が不足したり、素材・原材料価格が高騰したりすることでサプライチェーンの混乱が起きている。このことから、パソコン関連商品の購入を延期している。そのため、計画的な物品費の使用ができていない。国内外の新型コロナウイルス感染症の拡大により、国内外の空輸・郵送などに遅れが生じている。このことから、書籍の購入を延期している。そのため、計画的な物品費の使用ができていない。新型コロナウイルス感染症による経済政策 (財政政策・金融政策) がある程度の間隔で実施され、それによって金融市場は反応している。そのため、分析に適している内容とタイミングを考え、経済・金融データを購入するタイミングを遅らせている。そのため、計画的な物品費の使用ができていない。2022年度になるとwithコロナと言われるように状況が改善すると考えられる。そうした状況下で、適切な使用を考えている。
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