2021 Fiscal Year Research-status Report
Hospital System in Philippine Local Societies during the late-19th to early-20th Century
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21K01596
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
千葉 芳広 金沢大学, 経済学経営学系, 准教授 (20312340)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 病院 / 市場 / 慈善 / 貧困 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、19世紀後半から20世紀前半のフィリピンにおける経済開発、医療政策、現地社会が、いかに複合的に作用して病院を含む地域医療の雛型を形成してきたのか考察し、現地住民の生活の近代化への影響を評価するものである。この課題解明のために、令和3年度は、コロナ流行による海外渡航の困難性を鑑みて、研究文献のサーヴェイおよびその成果の研究発表などを予定通り遂行した。 令和3年7月17、18日には、フィリピン研究会全国フォーラムを主催し、本研究課題との関連において海外研究者を講演者として招待した。本科研費の一部をその講演料などに当てた。そこで得た刺激は、当該年度の研究成果に反映されている。 令和3年度の研究成果の概要は、令和3年12月18日に医療社会史研究会(オンライン)での発表に反映されている。スペイン統治末期からアメリカ統治期にかけてのフィリピンの病院制度を考察した。病院制度の民族化および医療格差の観点から、アメリカ植民地政府により設立された国立病院に焦点を当てている。スペイン期のカトリック修道会、アメリカ植民地行政の果たした役割は大きかったが、アメリカ期になると、病院経営は植民地財政支出の制約のために患者の自己負担すなわち医療市場に依存しなくてはならなかった。1920年代以降になると、医療行政の主導権がフィリピン人に移行するなか、地方社会にも病院は設立されるようになるが、貧困病床の数も制約されていたため、所得格差に基づく医療格差は大きかった。 しかしながら、フィリピン人貧困層が病院医療サービスを購入しようとしていなかったという見方もできる。今後は、医療需要サイドや経済開発にも配慮して考察を進めたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、研究文献のサーヴェイを中心に研究をまとめて発表することができた。令和4年度以降の海外調査研究の準備として、有効な作業であった。
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Strategy for Future Research Activity |
病院制度に関して史料調査を進める。併せて患者およびその地域社会に関する史実を、海外調査から浮き彫りにしていく。海外調査が困難になった場合には、国内研究機関に所蔵している統計書に基づき、病院経営を財政面から考察することに力を注ぎたい。
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Causes of Carryover |
コロナ感染症による旅行規制などのために、学会、調査などに出張することができなかったことが理由である。使用計画としては、スペインにある公文書館への調査、学会への参加のための出張費用として使用する予定である。いまだ出張がむずかしい場合には、助成金を翌年に繰り越す場合もありうる。
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Research Products
(5 results)