2021 Fiscal Year Research-status Report
1940-90年代における失業対策事業の政策形成と失対労働者運動に関する研究
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21K01598
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
杉本 弘幸 大阪大学, 文学研究科, 招へい研究員 (10625007)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ジェンダー / 失業対策事業 / 女性失対労働者 / 社会政策 / 社会福祉 / 全日本自由労働組合 / 婦人部 / 労働運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
第1に1950年代の全日本自由労働組合婦人部の組織や活動について、検討した。彼女たちは、子供の保育所と小中学校の義務教育、男女同一賃金と待遇を求めていた。また、婦人部ができていない地域分会が多数であり、組合の分裂状況なども報告されていた。婦人部の組織問題についても議論され、男性のみの組合とは異なり、男性の無理解による活動の難しさや、家事育児による忙しさ、体力的な問題から組合活動に専念できない女性特有の問題が多くあった。婦人部幹部や活動家も少なく、組合活動もスムーズに展開しなかった。だが、女性だから組合間の対立が乗り越えられた事例や、地域住民との共通する要求である託児所の建設や購買部などによって、活発に活動をしている分会も存在していた。 その後も男女の賃金格差の問題、新宗教が失対労働者に浸透している問題、『自労婦人しんぶん』の購読代の滞納や「じかたび」への合併問題、様々な地域で各失対労働者組合の婦人部の中での女性同士の争い、婦人部の活動が一部の女性活動家のみに負担が集中し、新しい活動家が育たないことや、活動自体が停滞しているなどの事例が報告された。 全国的な状況をみてみると、婦人部は全国に府県支部、地域分会ともにほとんどあるが、活動しているところと活動がないところの差が激しい。女性の組合幹部もまだまだ少なかった。支部や分会の「婦人部ニュース」もほとんど出ていなかった。このような困難を抱えつつも、組合運動は彼女達の生活要求をくみ上げつつ試行錯誤を繰り返し、婦人部は徐々に各地で設立され、拡大していったことが明らかになった。 その他に新聞に寄稿を求められ、一般向けに、戦後京都の女性失対労働者について、執筆した。また、戦後失業対策事業・失対労働者研究に関する研究史整理を報告し、論文化した。最後に「戦後失業対策事業研究会」の事務局を担い、一次史料の発掘やヒアリング調査も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染拡大防止のため、一定の史料発掘は行えたが、予定通りの史料調査やヒアリング調査ができていない。法政大学大原社会問題研究所の「戦後失業対策事業研究会」はオンラインで、継続して開催した。
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Strategy for Future Research Activity |
第1に法政大学大原社会問題研究所の「戦後失業対策事業研究会」を中核として、研究を進めている。こちらはオンライン開催を継続しつつ、対面開催やハイブリッド開催に移行できるように検討する。 第2に新型コロナウイルスの感染状況をみつつ、『戦後失業対策事業・失対労働者史料集成』(仮)編纂のための、史料調査やヒアリング調査を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大防止のため、史料調査やヒアリング調査が予定通り、遂行できなかったため。今後は、新型コロナウイルスの流行状況をみて、史料調査やヒアリング調査を行う。
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