2021 Fiscal Year Research-status Report
The Historical Origins of the Brexit: Elucidation of "Banking Supervisory Distance" through Verification of the UK's and BCBS's Archives
Project/Area Number |
21K01612
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
佐藤 秀樹 金沢大学, 経済学経営学系, 准教授 (20452112)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 銀行監督 / イングランド銀行 / バーゼル銀行監督委員会 / EU統合 / 欧州資本市場同盟 / 欧州復興基金 / グリーンディール政策 / 金融安定理事会 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、英国のEU離脱の起源を「銀行監督の溝」に着目して、アーカイブの分析を通して解明するものである。アーカイブは主に英国の中央銀行であるイングランド銀行(BOE)と、スイス(バーゼル)の国際機関である国際決済銀行(BIS)の現地資料であるバーゼル銀行監督委員会(BCBS)文書を主として利用する。 2021年度は7点の研究実績を挙げることが出来た。第1に、国内学会の全国大会での報告(審査有)である。日本金融学会春季大会にて金融史セッションで得られた知見は誠に有意義であった。BCBSとBOEの銀行監督政策とが接合する面を、BISにて収集したBCBS文書と、BOEにて収集した歴史文書を解析した報告を行った。これに対し、より焦点を絞った分析を行う必要性を学んだ。第2に、国際学会(豪州オンライン)での報告(審査有)を通して、海外の欧州研究者を中心に、銀行監督を軸心として議論を重ねることができた。第3に、金沢大学附属図書館の企画によって、コロナ禍のEUの情勢を講演する機会を得たことである。これはEUの歴史を振り返り、また英国のEU離脱を再考察する上で有意義であった。第4に、本研究の主たるフィールドである「銀行監督」の必要性と意義を問い直したことである。銀行監督論総論と題して1本の日本語論文を執筆した。第5に、欧州の域内市場の活性化の鍵を握る資本市場同盟(CMU)の意義を論文発表で明らかにしたこと、第6に欧州復興基金(RRF)とグリーンディール政策に関する分析を行い論文発表したこと、第7にグローバル金融監督を担う金融安定理事会(FSB)の活路を検討し、論文に取りまとめたことである。 以上のように、国内学会・海外学会に提出した2本の論文に加えて、4本の論文を執筆し発表することを通して、英国とEUの関係を歴史研究から現状分析へ繋げ、逆に現在の視点から銀行監督史を捉える研究を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、歴史系の学会で発表を行い、討論者及び参加者の方々から有益なコメントを頂いたことは、今後の本研究を効果的に推進する上で不可欠となった。 また、国際学会でオーストラリア・メルボルン大学主催の発表の場で交わした議論も、本研究に現代的な視点を加えた。 さらに、4本の論文を新たに執筆することで、欧州の銀行監督の研究を政策サイドおよび法律の面から深めることが可能となった。具体的には、銀行監督とその関連政策である資本市場政策、証券監督、保険監督を視野に入れた包括的な(横断的な)金融監督のあり方を考察することができた(クロスセクターの検討)。 そして、グローバル金融監督の今後の活路を、スイス・バーゼルに本部を置く金融安定理事会(FSB)の発足の歴史的背景、制度、及び政策の解析を行い、本研究の本丸である銀行監督論の構築の準備を進めることが可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、より精緻なアーカイブ分析を、英国・バーゼル・EUという3つの観点から進めることで、深みのある銀行監督研究を目指していきたいと考えている。 コロナ禍での現地調査は、状況次第であるため、現場での研究については様子を見ているが、その期間を利用して将来のアーカイブ研究のための準備を進める。論文に生かせていない、これまでに収集したアーカイブを整理することを通して、イングランド銀行、英国公文書館、バーゼル銀行監督委員会、フランス中央銀行の所蔵ごとに銀行監督の内実を解析する。 この作業を実施することによって、対象としている1970年代後半から1980年代における英国の銀行監督政策と、国際銀行監督政策、欧州の銀行監督政策の特質(相違点と共通点)を明らかにすることが今後の本研究の推進方策である。そしてもし可能ならば、長期的に見て、「銀行監督政策を貫く一般論」を析出することを念頭に論文発表を積み重ねていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
図書(研究文献)等の物品費で価格差が出たため(約3千円)。次年度も、引き続き研究に必要な文献購入費に充てる。
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