2021 Fiscal Year Research-status Report
West Germany's SMEs between the regional structure policy and the regional banking institutions, 1955 to 1967
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21K01613
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
三ツ石 郁夫 滋賀大学, 経済学部, 名誉教授 (50174066)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ドイツ / 経済史 / 戦後 / 構造政策 / 調整 / 地域 / 中間層 / 競争 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では中間層企業の経営分析、地域金融機関の業務分析、そして政府の中間層・地域構造政策分析の3つのテーマを設定したが、当該年度では外国訪問調査を延期したため、おもに第3のテーマである政策分析を国内に所蔵される文献や、Webにて入手可能な連邦議会議事録・報告書等の収集によって進め、とくに1960年代における西ドイツ経済政策の展開基軸について次のような見通しを得た。 戦後西ドイツの経済政策は1950年代における復興と産業・金融基盤整備、そして国際経済関係の再開を目的に自由主義的に展開したが、1960年前後になると経済成長率の鈍化を背景にして構造転換が課題とされるようになった。それは第一に炭鉱業や繊維工業など旧型産業部門の再編、第二に中間層企業と大企業との不均衡競争の是正、そして第三にこれらに関連して全国の地域経済の不均等発展是正であった。こうした課題は連邦省庁を横断する「地域経済政策委員会」(IMNOS)において議論され、3局面の均衡した構造と成長を目指す秩序政策策定によって対応するとされた。この議論の過程で1966・67年には戦後初の景気後退が生じ、そこから新たな不況対策的「景気・雇用政策」が求められたが、1969年には連邦と各州による包括共同事業「地域経済構造改善」法が秩序政策として成立した。これに基づいて1972年までに全国で21の地域経済支援プログラムが作成され、投資促進のための補助金と免税措置、利子優遇貸付制度などが連邦・州政府およびヨーロッパ復興計画(ERP)特別資産会計と連邦雇用庁によって予算措置された。 この「構造政策」は、戦後西ドイツ経済の特徴とされる「社会的市場経済」秩序との関連のなかで考察されうる。その大きな特徴は、連邦政府が競争秩序自体に対して前もって「調整」によって積極的に介入しようとする政策運営のあり方であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画ではR3年度に外国調査旅行を実施予定であったが、ドイツにおいて新型コロナウィルス感染が拡大し、日本政府から感染症危険情報がレベル2または3で更新されていたため、やむをえず調査旅行を延期した。また国内の大学図書館においても学外者利用が制限されていたため、国内調査旅行を控えた。当該年度においては課題に関連する図書購入、滋賀大学図書館蔵書と同館による他館相互貸借サービス、電子ジャーナル、そしてドイツ連邦・州議会のWeb議事録・報告書サービス等によって必要な資料を収集し研究を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究によって明らかになってきた論点は、第一に1960年代初頭において現れてきた経済成長率の鈍化ないし不況が中間層企業や旧型産業部門、農業地域の「構造的な弱さ」を重大な背景としていたこと、第二にこうした成長の停滞に対して、不況対策(雇用創出)とともに、連邦政府が構造政策によって積極的に構造変化を促進しようとしたこと、第三にこの構造政策の考え方は歴史的に形成されてきた調整コンセプトに基づいていることである。この構造調整を実際に担ったのが連邦省庁横断的な「地域経済政策委員会」であり、同委員会は1966・67年不況ののちには景気・失業対策をも包摂する積極的な成長政策として構造変革を提起することになった。 そこで本研究はこうした論点をめぐって進めることになる。今後の推進方策として、これまでの分析3テーマをより明確にして次の課題の解明を目指す。第一にこの委員会がいかなる議論に基づいて企業規模(中間層企業と大企業)と産業部門構成と地域経済の均衡基準(構造)を調整・決定したのか、第二になぜそれまでの貸付中心の支援制度が補助金中心へと変化したか、第三に中間層企業と地域経済がそうした構造政策によっていかに改善されたか、第四に政策実施過程において金融機関はいかなる役割を果たしたか、そして第五に構造政策自体はどのように評価され、その後いかに展開したかを明らかにすることである。 R4年度には上記5点の課題について、まず委員会の議論と構造政策の成立過程から分析を進め、予定する外国旅行資料調査において実態と資料の精査を重ね、テーマと課題を相互に関連させて滋賀大学紀要『彦根論叢』等に論文として公表する。また今後日本・ドイツの研究者等と意見交換を重ねていく予定である。
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Causes of Carryover |
主な理由は、ドイツと日本において新型コロナウィルス感染が拡大していたため、やむをえずR3年度に予定したドイツへの調査旅行と国内図書館での訪問調査をR4年度に延期したことである。 R4年度においては、コロナ感染状況や航空機運航状況等を考慮しながら昨年度予定のドイツ調査旅行と国内調査を実施する。
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