2023 Fiscal Year Research-status Report
West Germany's SMEs between the regional structure policy and the regional banking institutions, 1955 to 1967
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21K01613
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
三ツ石 郁夫 滋賀大学, 経済学部, 名誉教授 (50174066)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ドイツ / 戦後 / 地域経済 / 産業構造 / 中小企業 / 金融 / 政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は中間層企業を含めた中小企業経営分析、金融機関業務分析および中小企業と地域に関する構造政策分析の3つの領域から構成されている。令和5年度においてはノルトライン・ヴェストファーレン州東部デトモルト県地域経済と地域経済政策に関する研究を引き続き進め、その成果を大学紀要論文として発表した。また関連する内容を、社会経済史学会大会にて報告する準備を進めた。 上記3領域における課題を研究するために、令和5年10月に外国訪問調査を実施し、また国内での文献調査を随時実施して、その史料分析を進めているところである。外国訪問調査では、ドイツ・ベルリンの復興金融公庫(KfW)中央資料室を訪問して、1950年代から60年代の中小企業信用支援に関する資料を収集したことが大きい。同公庫はヨーロッパ復興計画(マーシャルプラン)で積み立てられた特別資産を利用して、1960年頃から地域中小企業のために信用供給を大幅に拡大させ、国境地域の支援や中小企業に対する支援で大きな役割を果たした。同じ外国訪問調査において、連邦公文書館に所蔵されている1965年以降の構造政策史料集を収集したので、これを基礎資料として連邦政府の構造政策分析を行うこととし、また中小企業分析では、手工業の経営設立や設備投資に関する資料収集のために、ベルリンのドイツ手工業中央連盟(ZDH)と連絡を取り、訪問はできなかったが、ネットを通じて多くの関連統計を入手し、今後、史料分析を行う体制を整えた。 1960年代中頃以降の構造政策が第1に新旧産業部門の景気対策として、第2に地域格差是正のための地域政策として展開するなかで、やや遅れて中小企業や新規設立企業を支援する第3の構造政策が登場してくる。本年度は前2者の構造政策の展開を明らかにしてきたが、今後第3の構造政策の意義と中小企業の実態を明らかにすることが重要な課題となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究計画では、令和3-4年度に2回の外国調査を実施する予定であったが、新型コロナウィルス感染の影響で令和3年度の調査を行うことができず、やむをえず令和4-5年度に調査を繰り下げて行った。研究期間1年目に予定通り調査を行えなかったこと、また2年目には外国調査を行ったが、感染がまだ収まっていないゆえに限定した調査になったが、このことが進捗状況がやや遅れていることの理由として大きい。また国内図書館での資料調査も、コロナ感染期間中はほぼ利用が制限されていたために延期していた。もっともこちらでは大学図書館の相互貸借サービスが可能であり、取り寄せによって代替可能となっていた。また最近ではドイツの議会資料や統計類も一部はネットによって入手可能となっていることも研究を進めるうえで役立っている。 それでも実地調査でないとわからないことは多く、結局研究期間を1年延長申請することになった。幸いこれが認められたので4年目にこれまで収集した資料を分析して論文としてまとめる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
4年目の最終年度では1960年代の中小企業の経営状態と金融機関の業務分析、そして構造政策についてまとめていくことにする。 これまでの研究によって明らかになってきた中小企業と中小企業政策の全体の流れは、第一に中小企業の経営状態が政府信用支援によって1960年ごろまでに自立可能となっていたこと、第二にこの時期から西ドイツ全体の経済成長が減速し、また大企業との競争が激しくなったことによって手工業や中小企業は不利な立場に追い込まれていたこと、そして第三に、1966/67年不況による政策転換によって、第3の構造政策として中小企業や新規企業設立に対する支援が、地域構造政策と中小企業支援策を重ね合わせて展開してくることである。 こうして現れてくる具体的な構造政策として、東西ドイツ国境地域と農村地域などの要支援地域を対象に、まず1968年12月インフラ整備のためのゲマインデ貸付指針が制定され、翌1969年8月には同地域での民間企業に対して投資を促進するための投資補助金法が制定され、また1971年には国境地域におけるインフラ整備と企業に信用支援に関する法律も制定された。こうした個別支援措置のうえに1972年から4年計画で地域経済構造改善のための枠組み計画が連邦と各州との間の協議によって成立した。 今後の推進方策として、本研究はこれらの構造政策の意義と中小企業実態への影響、そして政策と企業を仲介する公的金融機関の役割を明らかにしていくことになる。研究成果は個別に論文としてまとめる予定である。
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Causes of Carryover |
本研究は当初3年間の研究計画であったが、新型コロナウィルス感染拡大によって計画遂行が遅れたことにより、研究期間を1年延長申請し、この度承認された。最終年度においてこれまで収集した資料等を分析し研究成果としてまとめる予定である。この事情により、最終年度において使用が見込まれる経費分を残したことが、次年度使用額が生じた理由である。 次年度においては、すでに令和6年5月に社会経済史学会全国大会(会場:東京都立大学)での報告が予定されており、そのための旅費、研究打ち合わせ経費、また追加の設備や消耗品、資料調査等のために経費を使用する予定である。
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