2023 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀後半ソヴェト農村における国営農業保険:災害・家畜・作物・生命
Project/Area Number |
21K01618
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
崔 在東 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (10292856)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ソヴェト農村 / 国営保険 / コルホーズ / 中央アジア / バルカン / 穀物調達 / 火災 / 屠畜 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度の2023年度にはロシアによるウクライナ侵攻に伴い、ロシアで史料調査を行うことは実現できなかったものの、韓国とウズベキスタンを訪問し、図書館における史料調査と現地における研究交流とヒアリング調査を行った。さらに、ウズベキスタン以外の旧ソ連の中央アジア諸国とセルビアやブルガリアを初めてとするバルカン諸国および旧ソ連のジョージアにおいて現地調査とヒアリング調査を行った。ソ連時代の史料が主にモスクワに集中されていること、現地の史料の大半が現地語に書かれていること、さらに現地の特徴を理解しなければならないことなどのために、乗り越えなければならない新たな様々な課題が存在しているが、戦争が長期化している中、2年目に続き研究拡張の可能性を模索することができたことは重要な成果の一つである。 また、現地調査の傍ら、論文「ソヴェト農村における作物の災害、穀物調達と国営作物保険」と、ソ連時代に農民保護と防災対策として実施された国営火災・家畜・作物・生命保険などを総括する論文「ソヴェト農村における国営農業保険」を執筆し、日本のみならず欧米の学術雑誌への投稿を準備している。いずれもこれまで研究されることもなかった全く新しい研究成果である。 さらに、帝政ロシア政府は西欧諸国に先立って先駆的に農民全体を対象とする強制農業保険をすでに19世紀半ばから実施していたが、ソ連邦のボルシェヴィキ政権による国営農業保険の実施はその拡大版であった。目下、帝政ロシア時代から1990年のソ連邦の崩壊に至る150年以上の長い期間にわたる農業保険の歴史と実態を集大成する本を執筆中である。この研究は、日本や欧米は言うまでもなく、ロシアにおいてもこれまで注目されることもない全く新しい研究である。それだけに日本だけでなく欧米での出版も準備している。
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