2021 Fiscal Year Research-status Report
Research on organizational transformation of small and medium enterprises
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21K01628
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
小野 善生 滋賀大学, 経済学部, 教授 (80362367)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 経営学 / 質的分析 / 組織変革 / 中小企業 / リーダーシップ / 企業家行動 / コミュニティ / 地域活性化 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の研究実績については、本研究の主たる対象である中小清酒製造業に関して大きく分けて2つの点から研究実績をあげることができた。第1の実績は、中小清酒製造業における組織変革の方針として吟醸酒を主体とする高付加化価値製品へ主力商品ラインナップを刷新していることにある。高級酒路線への転換を可能にしたのは清酒が有する商品特性ではないかという仮説のもと、清酒のルーツから現在のものに至るまでいかなる清酒においていかなる革新がもたらされたのかを明らかにする研究に着手した。稲作文化が定着した頃から現在にいたるまでの清酒のイノベーション分析については、今年度においては清酒のルーツから現在の清酒の原型となった室町期から安土桃山期に確立された南都諸白までの分析を行った。この成果については、小野善生(2021)「清酒製造業における革新Ⅰ-清酒の起源から諸白の登場に至るイノベーションの史的考察-」『彦根論叢』429号 4~19頁に発表することができた。 第2の実績は、清酒製造業における組織変革に関するフィールド調査の進展である。今年度においては、滋賀県の清酒製造業者というくくりではなく、清酒製造業者をまきこみ地域おこしの一環として実施された「百済寺樽復活プロジェクト」の取り組みを対象としたフィールドワークである。昨今、地酒を地域おこしの一環として活用されている例がある。地域の歴史や伝統に裏付けられたストーリーが地酒のブランド価値を高めるという点で、地域おこしだけではなく清酒製造業者にとってウィン-ウィンの関係になる。「百済寺樽復活プロジェクト」は、滋賀県で醸造された最古の酒である「百済寺樽」を現在に甦らせて、百済寺を中心とする地域を活性化しようというプロジェクトである。この事例について、プロジェクトの発起人と舞台となっている百済寺の住職への聞き取り調査を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
清酒にまつわるイノベーションの類型化については、清酒のベースとなる醸造法で安土桃山時代に開発された南都諸白に至るまでの分析が完了した。その後の江戸期・明治期・そして現在までのイノベーション分析を完了させる必要がある。本報告書執筆時において江戸期の分析は終了しており、今後は明治期および現在までの分析を進めていく予定である。イノベーション分析の進捗については、計画通りである。 フィールドワークについては、内諾を得ている滋賀県の酒造業者3社および高知県の酒造業者1社への調査を進める。1社については具体的な訪問日程は確定しているが、それ以外の4社がこれから日程調整に入る予定である。酒造業者へのフィールド調査については、造りの時期(10月から3月)には実施することが不可能なので、それ以外の時期に絞られてくる。また、先方の都合もあるので、計画通りに進みにくい面がある。その中においても、比較的に順調に調査が進んでいる。ただし、今後の調査日程の交渉次第では、時期的にずれこむ可能性も想定される。 イノベーション分析とフィールドワークに加えて、組織変革に関する先行研究の渉猟も行っている。こちらに関しては、当初予定していたよりも渉猟すべき先行研究を精査できていない。この点が影響して、進捗状況としてはおおむね順調に進展しているという評価となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進方策は、清酒のイノベーション分析、中小清酒製造業のフィールドワーク、組織変革に関する先行研究の渉猟という3つのタスクに加えて、フィールドデータの質的分析に関する方法論の精査を行う。方法論の精査については、質的方法分析ソフトであるMaxQDAの使用方法についても習得する。 清酒のイノベーション分析については、江戸期、明治期、大正・昭和期、現在というステージで分析を行っていく。各ステージの分析結果は、論文として公表する方針である。 組織変革に関する先行研究の渉猟については、その結果を反映させてフィールドデータの分析枠組のベースとして活用する。 フィールドワークについては、調査協力先と早い時期に実現できるように交渉を進める。また、フィールドデータを収集するのと並行して質的方法論の習得も目指す。質的分析方法の習得が住み次第、フィールドデータの分析を進めていく。 これらの一連の研究成果を統合する最終目標として、研究書の完成を目指す。研究書の執筆自体はすでに着手しているが、それぞれの課題の進捗に応じて研究書を加筆するという従来からの方法を踏襲する。
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Causes of Carryover |
1,284円の次年度使用額が生じた理由については、残額に該当する使用目的の対象が無かったためやむを得ず残額として計上した。
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