2021 Fiscal Year Research-status Report
コンピテンシートラップ克服に向けた研究評価の組織革新: 知の探索の複数ケース分析
Project/Area Number |
21K01634
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Research Institution | Reitaku University |
Principal Investigator |
馬場 靖憲 麗澤大学, 経済学部, 特任教授 (80238229)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柴田 友厚 学習院大学, 国際社会科学部, 教授 (10380205)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | コンピテンシートラップ / 研究評価 / 知の探索 / 組織変革 / CTO / 複数ケース |
Outline of Annual Research Achievements |
日本企業は既存市場での知を活用する反面、知の探索からイノベーションに繋がる成果を出せず深刻なコンピテンシートラップに陥っている。本研究は、市場シーズを開発する探索研究に関して企業の研究評価はどのような役割を果たすことが出来るのか、複数ケーススタディにより明らかにする。知の探索の場合、研究者が事業部に対して情報優位に立つため、研究側が主導権を取って評価を実施してきた。しかし、その体制には情報非対称性による研究者の機会主義的行動など多くのリスクが伴う。一方、組織革新により両者が評価の主導権を分け合う場合、社内での評判を守るため協力して信頼関係が構築され、研究者の機会主義的行動は効果的に抑制される可能性が生まれる。 先行調査からは、大企業78社について、探索研究の評価を主導する主体は、研究者が39社(50%);事業部が7社(9%);研究・事業の両者一緒が32社(41%)であることが判明しており、企業が、研究評価に期待する役割が異なることが示唆されている。 本研究は、探索型研究であるため複数ケース分析を採用し、本年度は、仮説の検証に資する企業を数社、抽出し半構造化インタビューを実施した。その結果、探索研究からイノベーションが生まれる際には、その場に関与する関係者の特定の利益が強く影響し、企業が採用する評価体制の役割は限定的なことが確認された。さらに、評価に関する組織行動に関しては企業秘密の高い壁があり、一定の時間が経過した後でも情報公開には限界があることが判明した。 以上の理由から、本研究では、企業の評価活動を直接分析することに替え、探索研究からイノベーションが生まれた成功事例に関して、企業の研究評価、また、それを主導したCTOがどのように異なった役割を果たしたか、比較分析するアプローチを採用する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年からのコロナ禍により、感染防止の観点から国内外で開催されるはずだった学術集会の多くが中止を余儀なくされた。その結果、研究費に当初、計上した旅費による出張は中止され、学術集会での討論により初めて可能になる研究へのヒントを得ることが難しい状況であった。さらに、当初、予定したインタビュー調査に関しても、期間中、面談形式を設定するのは時期尚早であり、オンライン形式では本音を聞くことが難しかった。 2022年4月現在、感染の収束に関する見通しは明るくなってきたが、どのように企業関係者の意見を採り入れ、また、アカデミアの研究者と議論を進め、研究の質の向上を確保するか、依然として模索状況にあり、全体として研究の進捗に遅れが発生している。
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Strategy for Future Research Activity |
従来、プロジェクト・マネジメントにおける研究評価は技術に関する工学的研究テーマとして扱われ、経営学からの実証分析の対象となることは少なかった。例えば、「情報とインセンティブの経済学」は企業のプロジェクト管理について研究を進めているが、それは現象の一般化を目的とする理論研究である。一方、イノベーション研究は、不確実性下での意思決定等で経済学の理論貢献に依拠するが、その応用範囲は今なお、限定的である。 本研究は、分析対象を探索研究からイノベーションが生まれた成功事例に設定し、そこで、研究評価がどのような役割を果たしたか,特に、どのようなCTOのどのような行動がイノベーションをもたらし、逆に、理想的なCTOであってもその判断にどのような限界が生まれたか、複数ケースにより明らかにする。本研究は、基本的に企業の現状観察に基づく現状分析を目指す「技術経営」の観点に立ちながら、従来、考慮されることが少なかったプロジェクト・マネジメントにおける研究評価をイノベーション研究へ導入し、研究の新規性とする。
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Causes of Carryover |
2020年からのコロナ禍により、感染防止の観点から国内外で開催されるはずだった学術集会の多くが中止を余儀なくされた。その結果、研究費に当初、計上した旅費による出張は中止され、学術集会での討論により初めて可能になる研究へのヒントを得ることが難しい状況であった。さらに、当初、予定したインタビュー調査に関しても、期間中、面談形式を設定するのは時期尚早であり、オンライン形式では本音を聞くことが難しかった。 一方、2022年4月現在、感染の収束に関する見通しは明るくなってきた。このような変化に対応し、国内外の研究集会への参加を予定し、あわせて、対面によるインタビュー調査を実施し、研究活動を活性化する予定である。
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Research Products
(1 results)