2022 Fiscal Year Research-status Report
Resource redeployment and economic performance in global semiconductor industry
Project/Area Number |
21K01635
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
松本 陽一 慶應義塾大学, 商学部(三田), 准教授 (00510249)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 経営戦略 / 資源ベース / 資源の再配置 / 半導体 / エレクトロニクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は大別3つの課題に取り組んだ。第1に、半導体企業における技術者の再配置について、米国の特許データを用いて研究者の社内ネットワークを特定し、技術者がどのようにその中を移動するのかを捕捉した。結果として、企業はより需要の高い技術領域に社内の技術者を再配置しており、ネットワーク拘束度が低い研究者ほど移動しやすく、過去に共同研究関係のあった研究者のいるグループに移動する確率が高いことが明らかになった。 第2に、競合企業の行動によって、どのように半導体メーカーの新規事業参入が促されるのかを分析した。その結果、自社で製造能力をもつ垂直統合型企業と、それをもたないファブレス企業とでは、異なる行動をとることが分かった。具体的には、垂直統合型企業の方がファブレス企業よりも競争的な行動を仕掛ける確率が低いという意味で競争的ではない一方で、垂直統合型企業は、競合企業による競争的な参入行動に対して、競争的な反応(敵対的な参入)を行う確率が高いという意味で競争的であることが示唆された。 第3に、分析の対象を半導体を含む日本のエレクトロニクス関連企業に広げて、過去のリストラ(撤退)によって生じた余剰資源の再配置の傾向を分析した。結果として、日本のエレクトロニクス企業において、過去20年間に事業撤退によって生じたはずの余剰資源(お金)は内部に現金として蓄えられており、その傾向は、相対的に高収益な状況で撤退行動をとった企業よりも、低収益で撤退行動をとった企業に顕著であった。一方で、先行研究が全世界の製薬企業を対象に行った分析で明らかにした結果とは異なり、高収益企業が撤退によって生じた余剰資源を将来の成長のための投資に用いているという傾向は日本のエレクトロニクス企業においては観察されなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
特許データを利用して企業内部の資源の再配置(人材の再配置)を観察することは予定通り進んでいる。一方で、そのデータを利用した論文が学術誌に採択されるまでには多くの課題があるため、論文の改訂を進めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度取り組んだ課題の1つめと2つめについては、学術誌への投稿論文がほぼ完成しているので、さらに改訂に取り組み、なるべく早い時期に投稿を完了させる。また、本年度さらに追加した3つめの課題については、研究の初期段階であり、学会発表等を重ねることで、研究をより深めていきたい。これに加えて、半導体企業の技術者の社内での再配置については、実際のコラボレーションに基づいた社内ネットワークにもとづく再配置の特定(今年度の1つめの研究)だけでなく、研究者がどのような技術分野を担当するのか、という知識に基づいた再配置の特定の可能性を検討しており、次年度はこの課題にも取り組む。
|
Causes of Carryover |
本年度は予定していた研究を順調に実施することができた。わずかに次年度使用額が生じているのは、効率よく資金を使うことが出来た結果である。次年度も計画通りの研究を着実に実施する。
|
Research Products
(4 results)