2021 Fiscal Year Research-status Report
医療機関の高信頼性組織の構築に向けた脳神経科学を応用した経営学的研究
Project/Area Number |
21K01637
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
水野 基樹 順天堂大学, スポーツ健康科学部, 教授 (20360117)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水野 有希 日本女子体育大学, 体育学部, 准教授 (20450231)
岩浅 巧 早稲田大学, 人間科学学術院, 講師(任期付) (60850774)
芳地 泰幸 日本女子体育大学, 体育学部, 准教授 (70736256)
山田 泰行 順天堂大学, スポーツ健康科学部, 准教授 (80531293)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 高信頼性組織 / 脳神経科学 / fMRI / リーダーシップ / 組織開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
医療に対する過度な社会的要求が長時間労働の温床となり、精神的・身体的健康の喪失や労働意欲の低下へと繋がっている。地域社会から信頼される医療組織でありながらも、医療従事者が働きがいや生きがいを見出すことのできる職場づくりの実現が望まれている。 地域社会と医療従事者がともに高い信頼を寄せる医療組織、すなわち「高信頼性組織」を構築するには、高信頼性組織の構成概念であるワーク・エンゲージメント(仕事に対する充実感と活力)と心理的安全性(医療従事者間の深い信頼関係)を両立することが重要である。そこで、本研究では、以下の2つの研究目的を設定した。 1)医療機関における高信頼性組織に寄与する心理的・社会的要因を明らかにすること。 2)高信頼性組織の管理職者が発揮するリーダーシップの特徴を明らかにすること。 研究初年度の2021年度は、医療画像診断を専門に行う研究協力機関との打ち合わせを実施し、fMRIによるリーダーシップ評価方法に関する実験プロトコルを策定した。また、一連の調査(fMRI調査、Web調査、面接調査)を予定する首都圏の民間病院に赴き、看護部長ら管理職者との打ち合わせを実施し、研究概要の説明、質疑応答、インフォームド・コンセントの手続きに関する最終確認を行った。 さらに、一連の調査に向けた予備調査として、高信頼性組織に寄与する看護組織の心理・社会的要因の解明に向け、全国の100床以上の病院に正社員として従事する看護師を対象にWeb(オンライン)によるアンケート調査を実施した。最終的な有効回答者は377名(女性312名、男性65名、平均年齢43.1歳、SD=9.6)であった。詳細な統計解析は実施中であるが、オーセンティック・リーダーシップと心理的安全性、オーセンティック・リーダーシップとーク・エンゲージメントに有意な正の相関がみられ、高信頼性組織の規定要因としてのリーダーシップの重要性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度は、おもに以下の3点に着手した。 ①fMRIによるリーダーシップ評価方法に関する実験プロトコルの策定 ②一連の調査(fMRI調査、Web調査、面接調査)に関する研究概要の説明、質疑応答、インフォームド・コンセントの手続きに関する最終確認 ③全国の100床以上の病院に所属する看護師を対象にしたWeb(オンライン)によるアンケート調査の実施 なお、新型コロナウイルス感染症の影響による医療従事者の負担を考慮し、当初予定してたfMRIの調査プロトコルに関する実機による最終確認を目的とした予備実験の実施は見送った。 以上、4年研究の1年目として、本研究プロジェクトの進捗はおおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染症の感染状況を注視しながら、22年度は民間病院を対象に、おもに3点の調査に着手する予定である。 ①看護師長と看護師を対象に質問紙調査を実施し、実際の医療現場において、高信頼性組織に寄与する看護組織の心理・社会的要因を明らかにする。 ②民間病院の看護師長を対象に半構造化面接の実施し、高信頼性組織の形成過程について、質的・定性的な観点から明らかにする。 ③fMRIを熟知する協力研究者の医師と放射線技師による技術支援のもと、fMRIによるリーダーシップの効果的な測定方法を検討するための予備調査の実施後、高信頼性組織を統括する民間病院管理職者のリーダーシップについて、生理的指標(fMRI・脳機能イメージング)の側面から評価する。
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Causes of Carryover |
21年度では、新型コロナウイルス感染症の影響による医療従事者の負担を考慮し、当初予定してたfMRIの調査プロトコルに関する実機による最終確認を目的とした予備実験の実施を見送った。そのため、調査協力機関に対する謝金や研究メンバーの旅費等の当初予算に差分が生じた。この予備実験は、22年度の当初研究計画にアドオンする予定である。
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