2021 Fiscal Year Research-status Report
Behavioral analysis of corporate architecture
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21K01640
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
朝岡 大輔 明治大学, 商学部, 専任准教授 (20824345)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | コーポレートガバナンス / 行動経済学 / アーキテクチャー |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、出発点として、伝統的な経済学に対比させる形で、企業における意思決定に影響を与える行動経済学的な要素の研究を進め、朝岡 (2021) として発表した。その概要は以下の通りである。 独立して合理的な意思決定を行う個人の集合と対比される、限定合理性の下に置かれ、相互認知する集団という社会観の下では、生身の人間の時間や注意の範囲に限界があることが重視される。完全情報の前提とは異なり、現実の人間は、日々絶え間なく流入する情報の重要度を知り、取捨選択したいと考えている。そこから、制度が形骸化し得る要因として、運用において伝達される、重要性に関するシグナルの役割が導かれる。一見、精緻に組み立てられた文書であっても、制度に関する位置付けのコミュニケーションや運用のされ方を通じて、その重要性に関する情報が強い形で共有されることは、制度の実質化と形骸化の差異を生む。 また、金銭的な報酬だけでなく、賞賛や内部評価などの心理的な報酬にも重きが置かれる。伝統的な経済学においては、少なくとも長期的に、株主などの投資家の利益の保護が意思決定の目的とされ、それが経営者の利益と齟齬を来すエージェンシー問題の解決策として、金銭的な報酬の設計が重視される。これに対して、行動経済学の枠組みの下では、人間の持つ承認欲求の影響を重視する。組織内部の評価、表彰や優遇に見られる、非金銭的な報酬の存在は、創造性や進取の気性を生むこともあれば、不名誉や恥の回避という停滞を生むこともある。これらの要因は、投資家の利害と必ずしも重なり合っている訳ではなく、意思決定を巡る利害の齟齬を生む。こうした行動が現実に存在することを理解することは、制度を効果的に構築する上での基礎となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画に沿って研究を進め、その過程で企業の意思決定に関する論文1本 (巻頭論文) の発表に結実した。計画に対して概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き研究に取り組み、企業のアーキテクチャーに関する著書1冊、投資家との相互作用やESG投資の問題を含む、金融市場における企業の活動やコーポレートガバナンスに関する英文著書1冊をそれぞれ刊行予定である。
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Causes of Carryover |
デスクトップパソコン及びディスプレイの更新を見合わせたため。翌年度以降に行うか、図書購入に使用する計画である。
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Research Products
(2 results)