2021 Fiscal Year Research-status Report
組織で働くプロフェッショナルの働きがいの研究:「仕事の意味」の視点から
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21K01643
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
古田 克利 立命館大学, テクノロジー・マネジメント研究科, 准教授 (20612914)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今井 裕紀 新潟国際情報大学, 経営情報学部, 講師 (20866529)
大竹 恵子 京都先端科学大学, 経済経営学部, 講師 (70880201)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | キャリア / キャリアトランジション / 仕事の要求度 / ストレス / メンタルヘルス / 健康経営 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、2019年2月に実施した調査で得た538件のデータを分析した。分析の目的は、仕事の要求度と心理的ストレス反応の関連に対するキャリア・トランジションの調整効果の有無を明らかにすることである。特に、キャリア・トランジションの量的側面に着目し、主観的な転機経験の数が仕事の要求度と心理的ストレス反応の関係を緩和することを検証した。 キャリア・トランジション理論は、人生の転機や節目に着目した理論群を指す。トランジションは、日常語としては「転機」と訳され、生涯発達心理学の文脈では「移行」あるいは「移行期」を指す言葉である。本研究では仮説1「仕事の要求度は心理的ストレス反応を高める」、仮説2「主観的キャリア・トランジションの経験数は、仕事の要求度が心理的ストレス反応を高める関係を緩和する」の仮説を導出したうえで、量的検証をおこなった。 分析の結果、主観的転機経験の数が多いほど、仕事の要求度が心理的ストレス反応を高める関係を緩和することを明らかにした。この結果は、キャリア・トランジションは新たな役割や価値観が累積されていく機会として捉えることが可能であり、それは個人の心理的資源となり得ることを示唆するものである。 また、メンタルヘルスの1次予防策のひとつとして、個人の主観的転機経験を振り返る取り組みが有効である可能性を示した。例えば、ライフレビューによる主観的転機経験の再構成があげられる。過去の未解決の課題や葛藤への気づきと見直しを促し、人生後半期の生き方への橋渡しを可能にするとして、中年期のライフレビューの重要性が指摘されてきた。本研究の結果は、中年期に限らず30代から50代までの労働者へのライフレビューが主観的転機経験の知覚を促し、仕事の要求度よる心理的ストレス反応の高まりを抑制する可能性があることを示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度の進捗状況は以下の通りである。 (1)先行研究の調査を通じて、「上司の支援」「キャリア継続意思」「仕事観」「職業自己未来像」「自己未来像」「抑うつ」「仕事の要求度」「ワークエンゲイジメント」を主要概念とした研究フレームワークを作成し、アンケート調査を実施した。2021年度はヒューマンサービス系プロフェッショナルに焦点をあて、看護師、理学療法士、介護福祉士を対象とした。 (2)2019年度に回収したデータを用いて、仕事の要求度と心理的ストレス反応の関連に対するキャリア・トランジションの調整効果の有無を検討した。特に、キャリア・トランジションの量的側面に着目し、主観的な転機経験の数が仕事の要求度と心理的ストレス反応の関係を緩和することを検証した。分析の結果、主観的転機経験の数が多いほど、仕事の要求度が心理的ストレス反応を高める関係を緩和することを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、2021年度に実施したアンケート調査のデータを継続的に分析し、分析結果を国内学会で発表する。また、発表した内容を論文として取りまとめ、国内学会誌への投稿を目指す。
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Causes of Carryover |
理由)ヒアリングの件数が、当初予定していた人数に達しなかったため、謝金・旅費分を、次年度に繰り越すこととなった。また、アンケート(インターネット調査)の費用について、当初想定していた金額より廉価にアンケートを実施できたため、その差額を次年度に繰り越すこととなった。 (使用計画)プロフェッショナル本人やプロフェッショナルを雇う企業へのヒアリングを、今年度に実施する予定である。その旅費として、繰り越し分の金額を使用する予定である。また、インターネット調査(二次調査)費用としても、繰り越し分の金額を充当する。
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Research Products
(2 results)