2021 Fiscal Year Research-status Report
地方における新規株式公開企業の成長要因に関する実証研究
Project/Area Number |
21K01646
|
Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
船岡 健太 九州産業大学, 商学部, 教授 (30615357)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 新規株式公開 / 地方企業 / 企業の成長性 / 過小値付け / ファミリー企業 |
Outline of Annual Research Achievements |
船岡・姚 (2022)では、ファミリー企業の存立基盤である社会情緒的資産が、新規株式公開(IPO)時の公開価格の過小値付けにおよぼす影響について考察している文献のサーベイを行った。このテーマを取り扱った先行研究が検証を行った仮説のエッセンスは、IPOにおいて、ファミリー企業は、自分達の社会情緒的資産を保全するために、大きな過小値付けを受け入れるというものである。IPO株式の公開価格を低く設定することによって、なぜ社会情緒的資産の損失を回避することができるのであろうか。それは、IPO株式を割安な状態にすると、投資家が一定のリターンを獲得できる蓋然性が高まることに起因する。公開価格の過小値付けを受け入れると、IPO株式の投資対象としての魅力を高めることに寄与する。多くの投資家を惹きつけることに成功すれば、特定株主に割当が集中することや、投資家が集まらないことによる新規公開の中止に伴うファミリーの名声失墜といったことを回避できるという仮説である。 このような仮説の検証については、ドイツ企業を対象とするLeitterstorf and Rau (2014)では支持、Kotlar et al. (2018)ではヨーロッパ7か国を観察対象とした場合は不支持であるものの、ドイツ企業に絞ると仮説を支持する結果が検出されるとしている。このような国により結果が異なる状況は、ファミリービジネスの特徴がそれぞれの国ごとに存在している可能性を示唆するものであろう。船岡・姚 (2022)では、IPOを行うファミリー企業をどのように識別するのかについて国ごとに適切な基準を設定する必要性、およびIPO企業の社会情緒的資産をどのように計測するのかについて検討を行わなければならないことについて指摘を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究が着目する新規株式公開を行う地方企業はファミリー企業であることが多い。ファミリー企業の多くは、一族の永続性や名声などを含む社会情緒的資産を存立基盤として企業活動を行っている。船岡・姚 (2022)では、社会情緒的資産が、新規株式公開時の公開価格の過小値付けにおよぼす影響について考察している文献のサーベイを行った。この文献サーベイにより、今後において実施する実証研究のデザインに関するアイデアを得ることができたと考えている。実証研究のデータ収集についても着実に進めることができている状況にある。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後においては、船岡・姚 (2022)における新規株式公開時の公開価格の過小値付けにおよぼす影響について考察している文献のサーベイにより得ることができた実証研究のデザインに関するアイデアをベースにデータの解析を行っていく。データ分析が一段落した段階で、研究会・学会等における報告を行い、報告時のコメントを取り入れ、専門雑誌への投稿を行う予定である。
|
Causes of Carryover |
より直近のデータを実証研究に含めることを目的としてデータセットの購入時期を後倒しすることを決定したため。令和4年度においてデータセットの購入を予定している。
|