2021 Fiscal Year Research-status Report
日本の上場企業における最高財務責任者の属性と経営への影響
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21K01649
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
篠沢 義勝 一橋大学, 大学院経営管理研究科, 教授 (10897648)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | データ収集 / 分析手法 / 統計ソフトウエア / 海外子会社データ |
Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度の研究活動は主に「A:データ収集」と「B:データ分析手法の吟味」の2つであった。(A)データ収集では(a-1)本研究の中心である最高財務責任者(以下CFO)に関するデータ収集と(a-2)そのCFOが所属する上場企業の財務データ、CFOを有しない上場企業の財務データを過去10年に遡って集めた。データの収集源として(a-1)CFOについては、プロネクサス社の企業情報データベースEOLであり、このデータベースは本学の図書館システム経由で利用した。(a-2)上場企業の財務データは、主に学内の「みずほ証券寄附講座オフィス」に設置されたPC端末よりクイック社Astra Managerを利用し、主要財務データを集めた。さらに2022年度は「海外子会社」の詳細データ5年分を東洋経済新報社より購入した。前出のAstra Managerの財務データのひとつに「海外売上額」がある。しかし、CFOの業務の「煩雑性・複雑性」を図るうえでは「海外売上額」だけ不十分であり、CFOが掌握しなくてはならない「海外子会社」の存在は、一つの重要指標だからである。
次の主な活動として(B)データ分析手法の調査がある。はじめに計画案どおり2022年度は「共分散構造分析(Structural Equation Modeling以下SEM)」の手法について、その原理を文献や論文を通じて理解し、次に同分析手法が使えるソフトウエアについて調べた。結果として(b-a)SEMを用いた研究論文はファイナンス分野では少ないこと、(b-2)そしていくつかの汎用的な統計ソフトウエアでもSEMを用いた分析が可能であることが判明した。その結果として(b-2)当初購入予定していた統計ソフトウエアSPSSからSTATA(永久ライセンス)へと購入を変更した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度では財務データおよびCFOデータの収集にも習熟できた。初期データを利用した調査で判明した重要点は「2012年にCFOを有する上場企業は358社だったが、2021年になるとCFOを有する上場企業は846社へと大幅に増加」していることである。この増加基調は今後のCFOの影響度を統計分析(例えばパネルデータや差分の差分法など)する際に、大変有用な傾向である。
次に分析手法については、SEMに次いで新たなデータ分析手法として「ビッグ・データ」の手法を検討した。具体的には文章情報を分析する「テキストマイニング」および「ディープ・ラーニング」である。これらの分析を可能にするソフトウエアを制作販売する会社の導入事例セミナーやオンライン会議を通じ、本研究への利用の可能性を検討した。
達成度が遅い点を挙げるとすれば、コロナ禍による出張制限が継続し、国内外の研究者との対面での打ち合わせや学会活動が未消化だったことである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進は次の4つを考えている。(1)CFO情報の充実化、すなわちCFOのプロフィールとしての在籍する企業の財務データおよび非財務データとの結合作業を一層進める。(2)上記のデータをAI(テキストマイニングやディープ・ラーニングなど)の新手法を用いて分析する。その為に専用の分析ソフトウエア―を購入する。(3)上記の結果を元にワーキング・ペーパーの英文初稿を書き上げる。(4)初稿版ワーキング・ペーパーを国内外の大学での教員・研究者向けセミナーで発表する。時期は2023年3月を目途とする。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響で対面作業を伴う研究活動が制限された。具体的には(1)海外出張を延期、また(2)対面での打ち合わせを必要とするデータ入力補助業務を延期したことである。2022年度中は、これら延期していた研究活動を実施するために助成金を使用する。
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