2023 Fiscal Year Research-status Report
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21K01663
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Research Institution | Kyoto Tachibana University |
Principal Investigator |
平尾 毅 京都橘大学, 経営学部, 教授 (50361861)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
星野 雄介 武蔵野大学, 経営学部, 准教授 (90635682)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | イノベーションの普及 / 社会構築 / テキストマイニング / イノベーション政策 / 非財務情報 / 国会会議録 / 人口知能(AI) / 持続可能な開発目標(SDGs) |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は「各アクターの認識の相互作用は、実際のイノベーションにどのような影響をもたらしたのだろうか」を基本的な問いとし、昨年度の問いと共に、イノベーションの主要アクターである産業界のイノベーションに関する認識の変化、国会会議録における新規概念に対する認識の変化、また日本のイノベーション政策が学術セクターに与えた影響を分析した。 まず、日本企業が開示する有価証券報告書の非財務情報において人工知能(AI)の認識の時系列変化をテキストマイニングで分析した。その結果、①AIに対する認識は産業ごとに異なり、②イノベーター理論の進化する解釈と同時に認識、投資、戦略化、商業化、収益化の段階を経て進展し、③技術的な突破口から収益化まで約10年かかったことが明らかとなった。「イノベーションの普及」と認識の特性に関する領域への貢献を通じて、組織プロセスを加速することの重要性を指摘した。 次に、国会会議録を用いて持続可能な開発目標(SDGs)に対する認識の変化を、KH Coderを用いた分析、クラスタリング、トピック・モデリングという3つの手法を用いて分析した。その結果、①認識段階から企業や地方によるSDGsの推進という文脈に変化していること、②与野党間では与党は国際的な視点を重視し、野党は多様な論点とSDGsを関連させていることが明らかとなった。これら2つの認識の変化に関する研究成果はいずれも学術論文として公開した。 最後に、日本のイノベーション政策の重点課題が学術分野から社会課題にシフトしたことが、学術セクターにどのような影響を及ぼしたかをKAKENデータベースを用いて分析した。その結果、①科研費プロジェクトの研究も重点課題のシフトに合わせて変化したこと、②短期的成果が見込める研究に変化したことが明らかとなった。この研究成果は10月の国際会議と11月の海外研究会においてそれぞれ発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年4月に投稿した論文が不採択となり、査読者コメント等に基づいて内容を刷新した。その後、国際会議や海外研究会での発表コメントを踏まえて、2024年3月に新たな論文を投稿し、現在査読中である。 また、「研究実績の概要」にすでに記載した以外のイノベーションの普及プロセスに関するデータ収集を終えており、現在は分析に入る段階にある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策は「社会に複数の認識枠組みが存在する場合、それらはどのようにして社会的合意を形成したのだろうか」と「各アクターの認識の相互作用は、実際のイノベーションにどのような影響をもたらしたのだろうか」を基本的な問いとし、各アクターの認識変化の実証分析を行うことである。主に使用するデータは、国会議事録、総合科学技術・イノベーション会議等の議事録、経団連巻頭言、有価証券報告書、学術論文、メディア(新聞)の文章データなどである。 また、これらの研究の成果を国際査読誌に投稿していく計画である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、国際査読誌に投稿予定の研究「X-Innovationに関する実証分析」が遅れているためである。 また、使用計画としては、論文投稿前の英文校正代金等に使用する予定である。
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