2021 Fiscal Year Research-status Report
製造企業の品質創造経営の核心となる組織的理解共有状態の視覚化動態モデルの開発研究
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21K01681
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Research Institution | Surugadai University |
Principal Investigator |
海老根 敦子 駿河台大学, 経済経営学部, 教授 (30341754)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 品質創造経営 / 組織コミュニケーション / IFM(相互作用する場のモデル) / 組織的理解共有状態の動態モデル / 視覚化シミュレーション / 組織のコミュニケーション管理 / 品質創造力 / 製造企業 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度の研究実績は次の通りである。 1.製造企業実態調査結果の継続的解析:開発研究の推進基軸となる組織コミュニケーションの理論的モデルIFM(相互作用する場のモデル)を継続的に独自開発している。IFMを応用して,典型的な製造企業6事業所を対象に2017年度から3年間毎年実態調査を実施した。(1)この調査データの解析を継続的に実施しており,今回は新たな視座から,組織と組織構成員(個人)の間の相互作用に注目して組織的理解共有状態を評価した。(2)調査対象6事業所を,コミュニケーション水準と職階でグループ分けし,品質創造活動に関わる組織的理解共有状態の特徴の比較検討を通じて,組織的理解共有を増進させる構造的要因を探究した。 2.動態モデル開発のためのシミュレータ特性把握:組織的理解共有状態の動態モデルを開発するために,コンピュータ・シミュレーション環境を整備し,シミュレータの特性と機能を把握し,IFMに基づく組織的理解共有状態の表現として最適なモデリング方法を検討中である。 3.今回得られた知見:(1)上記1の継続的解析の結果,①品質創造活動に関わる組織的理解共有状態に関して,同一事業所内の部門間による組織的水準の差異と個人的水準の差異,部門内の構成員間によるそれらの差異,そして,構成員個々人の組織的水準と個人的水準の差異を明確にし,理解共有状態の多様性と複雑性の様相に関する具体的な知見を得た。②また,組織的理解共有を増進させる構造的要因について,企業の理念や将来構想,行動指針などを熟知した管理職育成が肝要であるという知見を得た。(2)(1)で得られた知見は,動態モデル構築において,IFMを構成する各種パラメータの設定に有意義な示唆を与える。 4.研究成果の公表:オペレーションズ・マネジメント&ストラテジー学会第13回全国研究発表大会で上記3(1)の成果を口頭発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の常として,研究遂行は必ずしも当初の想定とは一致していない。本研究は,製造企業の利潤の源泉である品質創造経営の問題を,組織コミュニケーションの問題,すなわち組織的理解共有の問題と捉え,組織コミュニケーションの状態の解析を通じて統一的に解明し,現実の製造企業経営の課題解決に応用しようとする報告者の先行研究の継続的発展である。本研究では,報告者が先行研究で継続的に独自開発している,組織コミュニケーションの理論的基準モデルIFM(相互作用する場のモデル)を動態モデル開発の拠り所としている。本研究の最大の目的は,IFMに基づいて,時空内に展開する組織的理解共有状態を視覚的に把握可能な動態モデルの開発を通じて,品質創造経営の状態を診断・改善する指針を追究することである。 本研究は,①IFMに基づいた動態モデルの開発と改良,②実態調査結果のデータ解析や製造企業事業所現場から得られる知見に基づく組織的理解共有状態の特徴の本質の抽出,③抽出した特徴の本質を踏まえた理論的モデルIFMの改良,を相互補完的に交互に繰り返しながら進める。 今回は,上記②の一環として,現有の実態調査データを,前年度までの解析とは異なる新たな視座から追加解析を実施した。調査データの新たな測定尺度の開発は,先行研究で実施した既存の質問項目の全体的再構成を伴うもので,多くの時間を要したが,その結果,品質創造活動に関わる組織的理解共有状態の多様性と複雑性の様相に関して,既存研究の知見とは異なる新たな動態特性に関する知見を得ることができた。よって,研究はおおむね順調に進展しているということができる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度の研究実施推進方策は次の通りである。 組織コミュニケーションとは,組織構成員が情報を交換することにより,理解共有を生成する相互作用の集合であると仮定して,相互作用する場のモデルIFMを継続的に独自開発している。このIFMを基準モデルとし,組織構成員をエージェントとするシミュレーション・モデルを構築し,組織構成員間の理解共有の相互作用が時空に展開していくプロセスを模した動態モデルを開発する。 前年度,シミュレータの特性とシミュレータに組み込まれている機能の把握を実施した。前年度の成果を継続的に発展させ,今年度の研究は,動態モデルの基礎となるベーシック・モデルの開発を中心に実施する。具体的には次の手順で進める。 ①前年度の成果をもとに,組織的理解共有状態の表現に最適なモデリング方法を検討する。②①で検討したモデリング方法に則り,個人間の相互作用を表現するプリミティブ・モデルを開発する。このモデルはIFMにおけるコミュニケーションの素過程の外観(outside view)を模擬し,組織内の構成員間の理解共有というミクロな構造を表現する。③②のプリミティブ・モデルを用いて,組織構成員全体のマクロな構造を表現するモデルを開発する。④③のモデルを用いて,構成員間の理解共有が時間とともに組織全体に展開していく動態を記述するモデルを開発する。⑤④の動態記述モデルを基に,相互作用の因果律を視覚的に把握できる表現方法を開発する。
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Causes of Carryover |
(理由)ソフトウェア保守サービス(利用期間:2022年2月1日~2023年1月31日)料金の会計処理が年度末期限にかかってしまい,年度内の会計処理ができなかったため。 (使用計画)令和4(2022)年度の予算執行が可能になり次第,会計処理される。
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Research Products
(1 results)