2022 Fiscal Year Research-status Report
A Longitudinal Study on Japanese Firm's R&D and New Product Development: Coevolutionary Perspective
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21K01702
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
濱岡 豊 慶應義塾大学, 商学部(三田), 教授 (60286622)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 製品開発 / ユーザー・イノベーション / 社会ネットワーク / 新型コロナウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
2007年度から行ってきた「製品開発についての調査」を実施した。941社に送付し、計176社から回答を得た(回答率18.7%)。2007年から2022年のトレンド係数が有意となったのは,設定した250項目のうち37項目であった。変化した項目からは前回調査同様「市場の変動の低下」「ユーザーとの関係の変化」「開発プロセスでの情報収集活動の低下」「製品の複雑化」「企業内,企業間での情報共有の進展」「企業内での公募,知識や情報共有の低下」などの問題が重要化していることがわかった。前回はトレンドが有意ではなかったが新たに有意となった項目には,「開発プロセスでの情報収集活動の低下」「ユーザーとの関係の希薄化」に関する項目が複数含まれており,これらの傾向がさらに強まっている。さらに,新たに「失敗をおそれない社風である。」「失敗しても再挑戦できる雰囲気である。」などが新たに低下傾向となり「失敗を恐れるだけでなくラディカルな製品も投入できない傾向」が強まっている。 前回に続いて東日本大震災・福島原発事故,新型コロナウイルスという緊急事態宣言に関する質問も設定した。東日本大震災・福島原発事故時は「自社の拠点」や「売上」よりも「原材料の調達」「製品の流通」などサプライチェーンへの影響が大きかった。緊急事態対応のため6 割の企業が「業務継続計画の策定」「社内での訓練」を行っているが,「調達先の整備」「生産拠点の整備」など外部との調整,特に「官庁,自治体との情報共有,連絡」の準備割合は低いままである。緊急事態に対して,「国や自治体の指針が発出されたタイミングで出社制限などを行う」上場企業の割合が2020年の61.8%から今回は89.3%へと増加した。日本政府の新型コロナウイルス対策にはPCR検査の不足など極めて大きな問題があり,政府方針に従うことには大きなリスクがあることを理解すべきである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画していた調査を実施し、これまでと同じ程度の回答を得ることができた。トレンド分析を行うことによって、前述のような傾向があることを確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度については、研究開発に関する調査を実施する予定である。前回2020年度までの調査で「研究開発の高度化」「ユーザーへの評価,対応の低下」「研究開発のオープン化の停滞と限界」「研究開発のインセンティブの変化」「海外でのR&Dの自律化と成果向上」「技術や品質の強化の一方での開発スピードの低下」といった傾向があったが、これらが継続しているか、新たな変化はないかを確認する。さらに、2010年、2020年の2時点の企業関係データとリンクすることによって、アンケート調査での主観的な回答と客観的なデータの関係を分析する予定である。
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