2022 Fiscal Year Research-status Report
Study on the Governance of Defined Contribution Pension Plans
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21K01704
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
西田 小百合 東海大学, 観光学部, 准教授 (80390285)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西村 佳子 京都産業大学, 経済学部, 教授 (90319442)
村上 恵子 県立広島大学, 地域創生学部, 教授 (90325142)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 企業型確定拠出年金 / 個人型確定拠出年金 / 世代 / 地域 / 運営管理機関 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,予備的分析として,以下の2件の成果物を提示した。 西村(2022)では,個人型確定拠出年金・企業型確定拠出年金の両方の加入者の資産運用状況について,厚生労働省「運営管理機関登録業者一覧」および,運営管理機関連絡協議会「確定拠出年金統計資料」等のデータを用いて,運用資産選択状況と運用利回りについて検証を行った。分析の結果,運用成績がここ数年芳しくない国内債券ファンドに年間100億円の資金が流入しており,投資額が減っていないこと等が明らかになった。また,世代別に見ると,個人型確定拠出年金では世代が低くなるにつれて外国株式パッシブやバランス・パッシブに投資する比率が高くなるが,企業型では20~30歳代の加入者が預金や保険商品に投資する割合が高いことがわかった。そこで,若年層の効果的な年金運用を後押しする施策が必要であることを指摘した。 村上・西田(2023)では,日経NEEDS(退職給付関連データ)の財務データを用いて,上場企業2,832 社の退職給付制度導入状況と確定給付型の企業年金を導入している企業1,852 社の積立不足に地域差があるのかを分析した。その結果,上場企業を分析対象としていることもあり,充実した退職給付制度を提供している企業が多く,退職給付制度の導入状況に地域差は確認できなかった。併せて,政府等の公表データを用いて,公的年金の受給額や個人型確定拠出年金への加入状況,退職後の生活設計に関する家計の行動や考え方に地域差があるのかについて検証した。導入状況に地域差は確認できなかったが,分析対象企業の中には複数の退職給付制度を導入している企業がある一方で,退職給付制度を持たない企業や確定拠出型の年金制度しか持たない企業があることがわかった。そういった企業への従業員が運用商品を選択する際の支援や,運用商品を選択しない加入者への支援の強化の必要性を指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は,令和3年度に購入したデータでは不足していた箇所に関するデータを追加購入することができたことから,分析可能な状態に整備する予定であった。しかし,購入したデータだけでは情報が不足しており,手入力で追加する必要のある情報が想定より多かったことから,すべてのデータを分析可能な状態に整えるのに想定以上に時間を要してしまった。また,新型コロナウイルス感染症の影響により,投資信託の手数料(委託・販売・受託)に関する運用会社等へのヒアリング調査ができなかった。これらが,予定していた分析や検証が,当初の予定よりやや遅れてしまった理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度上半期には,本年度NTTデータエービックより購入した投資信託データと,厚生労働省「運営管理機関登録業者一覧」などのデータを結び付け,不足しているデータを補う作業を行いつつ,企業型確定拠出年金の運用商品の提供状況,運用の状況について分析を行う。その際,加入者から見ると運用成績に大きな影響を与える経費について,(1)パッシブ・ファンドのうち確定拠出年金専用設計ファンドと,一般のパッシブ・ファンドの間で違いがあるか,(2)運用会社毎に差があるか,(3)運用会社を保有する運営管理機関と,運用会社を保有しない運営管理機関のファンドに差異があるか,などの視点で分析を進める予定である。いうまでもないが,経費そのものに関心を持っているわけではなく,確定拠出年金のスポンサー企業や運営管理機関による,商品選択および提供などに関する効率性や,加入者に対する忠実義務に関して論じることが目的である。 次年度下半期には,論文を作成し,研究発表,論文投稿などを適切な学会で行う予定である。
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Causes of Carryover |
本年度購入したNTTデータエービックからの投資信託データは,当初見積もっていた購入金額を下回ったため,残額が発生した。この費用については,次年度研究発表や論文の投稿を行う際の追加のデータ購入,旅費や物品費などとして繰り越す予定である。
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