2021 Fiscal Year Research-status Report
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21K01710
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Research Institution | Aichi Institute of Technology |
Principal Investigator |
羽田 裕 愛知工業大学, 経営学部, 教授 (80546268)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
羽田野 泰彦 公益財団法人名古屋産業科学研究所, CTLO, コーディネータ (10540586)
後藤 時政 愛知工業大学, 経営学部, 教授 (20329626)
野中 尋史 長岡技術科学大学, 工学研究科, 准教授 (70544724)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 知的財産 / マーケティング・ツール / 新規事業 / 医療機器・ヘルスケア / ポジショニング・マップ / パテント・マップ / 知財戦略 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,中小企業の新規事業への参入に対して,知的財産情報をマーケティング・ツールとして活用できる方法と有用性について,学術的および実践的に検証していくことである。 1年目から2年目の目的は,中小企業が特許情報から自社技術の強みを顕在するツールを開発し,新規事業の目指すべき方向性を見える化するパテントマップの可能性を明らかにすることであった。まず本ツールでは次の仕組みを確立した。Step1として,自社分析,市場分析,競合他社分析に重点を置き,中小企業が新規参入を検討する市場に沿った特許調査・分析を行い,関連する特許情報を抽出する方法を確立した。Step2として,Step1で抽出した特許情報をもとにブレイン・ストーミングおよびKJ法を組み合わせ,新規事業,技術・製品開発の方向性を検討する方法を確立した。Step3として,Step2で見えてきた新規事業の方向に焦点を当て,繰り返しStep1,Step2を適用し,新規事業の具体化を図っていく方法を確立した。 また本手法の精度を上げていくために,中小および中堅企業,大学学内において本手法を用いた実証を展開してきた。この実証を通じて,本ツールの課題点や改善点を見いだし,汎用的なツールへと発展させていく段階へと移行している。現在も継続して,医療機器・ヘルスケアに新規参入を目指す中小企業に対して,本ツールを活用した支援を展開してきている。本支援活動で得られたデータ・情報は今後も本研究へフィードバックし,本ツールの確実性および汎用性の向上につなげていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本ツールの基本的な枠組みの構築およびブラッシュアップという点では,本研究は順調に推移しているといえる。①対象企業の特許情報から技術的強みの抽出,②対象企業と関連する競合他社の特許情報の分析を行い「違い」の抽出,③市場・技術的潮流の俯瞰を総合して,技術的強みを活かした新規事業への参入に向けた方向性を見いだし,見える化できるパテントマップの具体化には成功している。また本ツールを活用した支援活動の実践を行っており,本活動から得られたデータ・情報をもとにブラッシュアップを行い,より使い勝手の良いツールへの発展に取り組んでいる。本研究の特徴である「学術」と「実証」のサイクルを回しながら研究を進めていくことができているという点は大きく評価できると考えている。 しかしながら,本研究の目的のひとつである特許と事業性との関係を明らかにする分析に取りかかれていないのが現状である。1年目は,本分析を行うための準備期間であったが,前記のツール開発に関する研究が新型コロナウィルスの影響を受け,滞った時期があったことが大きく起因している。 本分析は,中小企業を対象にマーケティング,技術経営,知的財産に関する考え,取り組み状況および財務関連指標に関するWedアンケートを実施し,特許と事業性との関係を明らかにしていくものである。1年目は,アンケート対象企業の抽出とアンケート調査の設計が主な取り組みであった。この作業については,早急に取り組んでいく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在,研究内容および計画の大幅な変更は予定しておらず,研究課題申請内容と同様のスケジュールで,本研究を展開していく予定である。 本研究の目的である理論的検討と実践的検討を繰り返し,マーケティング・ツールとして特許情報を積極的に活用して中小企業が独自に新規事業に参入できるよう支援するに関しては,今後も継続的に実施していく予定である。 2年目は,特許と事業性の関係を明らかにしていく研究に重点を置いていく。計画通り,中小企業を対象にマーケティング,技術経営,知的財産に関する考え,取り組み状況および財務関連指標に関するWebアンケート調査を実施する。具体的にはアンケート調査で得られた結果と特許の重要性評価値と併せて深層学習の一種であるVariational Auto Encoderを用いて,特徴的な類似項目を潜在変数としてまとめ上げ形式知への変換を行うことによって,標準化された事業性評価を行う。さらに評価のために各特徴項目を入力して,企業の倒産や業績の伸び率を目的関数とする予測モデル,XGboostと呼ばれる予測性能に優れ,評価項目の予測への寄与率も分かる機械学習モデルを使って,その予測性能を評価する。また信用リスクなどの評価を行い形式の妥当性も評価する。これらの結果を踏まえて特許と事業性の関係を評価し,マーケティング・ツールとしての可能性,有用性を明らかにしていく。 さらに本研究を遂行する中で重要性を感じた新規事業への参入可能性を秘めた中小企業を選定するための条件づくりに追加的に取り組んで行く予定である。国内に数多く存在する中小企業を手当たりしだいに支援していくのではなく,新規事業への参入可能性がある中小企業を選定する必要性が高い。そこでこれまで多くの中小企業の目利きを行ってきている産学官連携コーディネータの暗黙知を形式知化していく研究を試みることにする。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの影響を受け,ヒアリング調査等の実施が困難であったこと,学会等がすべてオンラインになったことが理由となり,旅費の支出が予定より大幅な変更となったため。 次年度は新型コロナウィルス感染拡大防止の対策を取りながら,予定していた企業等へのヒアリング調査を実施していく予定である。
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