2021 Fiscal Year Research-status Report
Comparison of Servitization between Japan and Nordic countries based on sustainability
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21K01728
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
戸谷 圭子 明治大学, グローバル・ビジネス研究科, 専任教授 (20350308)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤岡 資正 明治大学, グローバル・ビジネス研究科, 専任教授 (20817994)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | サステナビリティ / 製造業のサービス化 / サービス・エコシステム / 国際比較 / 高コンテクスト / 不確実性回避 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、サービス研究が盛んなスウェーデンを中心とした北欧と日本の製造業のサービス化ビジネスの比較を行い、製造業サービス化における両者の共通点と相違点を明らかにすることである。 2021年度の当初計画は、①製造業サービス化比較のためのフレームワーク検討、②両国間の比較対象企業の選定と定性調査設計で、①、②とも概ね予定通り進捗している。①②の実施により以下の2つの仮説が成果として得られた。 1つ目は、人材流動性の違いによる製造業サービス化に必要な人材の確保可能性の違いである。これまでの日本国内での調査から、国内企業ではサービス化に必要な人材の不足が明らかとなっている。理由の1つとして日本における人材流動性の低さがあげられる。スウェーデンの人材流動性は日本に比べて高いことから、サービス化に必要な人材の確保可能性が高いことが考えられる。 2つ目は、国文化の相違によるサービス化ビジネスへの対応の違いである。先行研究結果から、スウェーデンより日本の方が高コンテクスト、かつ、不確実性を回避する文化であることが明らかとなっている。 製造企業は自社製品に対してあらゆる事象を想定した書類を準備し、リスクを最小化している。一方、サービスビジネスはそのI H I Pなどの特性上、想定外の事象が発生しうる。つまり、製造企業においても想定外の事象を受け入れて適切に対応することが求められる。このことが、不確実性を回避する文化を持つ日本の製造業にとってサービス化が進まない理由の1つと考えられる。人材流動性の違いについては、法律・制度側面とともに文化的背景も影響していることが考えられる。製造業のサービス化は企業のビジネス変革であり、文化変革でもある。文化的背景によって製造業サービス化の推進度合いに違いがあるならば、文化に適合したそれぞれのアプローチの検討が可能となり、この点が大きな意義と考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下の点について議論を進めている。1つ目は定性調査に向けた対象企業候補の選定である。日本側の候補については、製造業のサービス化コンソーシアム会員企業(産総研・明治大学主宰、現在18社)をはじめ、シノハラプレスサービス(千葉)などのサービスビジネスを推進している企業を候補として検討している。この中から数社に定性調査を行う予定である。北欧側については、サービスビジネスを展開しているSKF、ボルボ、オムロン欧州を現在候補とし、その他も検討中である。 2つ目は定量調査の設計で、主に2つの点について議論を進めている。1つは回収数を高めるための依頼方法の検討、2つ目は仮説検証のための調査項目の検討である。 定量調査の依頼方法は日本、北欧とも企業情報データベースより送付先を抽出し、アンケートURLを記載した手紙(ハガキ含む)を送付先に郵送、Web回答の方式を計画している。日本においては過去の調査経験から、この方法で問題がないと考える。北欧においては郵便事情や文化の違いから、この方法で依頼先へ適切に届くか、また、依頼内容が適切に伝わるか不明な点が多い。この点について、例えば、アンケート内容は英語とし、依頼文は母国語にするなど、Patlik教授(Stockholm Scholl of Economics)、Kowalkowski教授(Linkoping University)らとともに議論を重ねている。 調査項目については、製造業サービス化に関する認識や阻害要因、価値共創に関する項目、高/低コンテクスト、および不確実性回避に関する項目を中心に、先行研究(例えばToya et al. 2016; Hall 1976; CultureCompass 2022など)をレビューしながら検討している。また、被験者負担を極力少なくするため、調査項目数についても議論を重ねている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として以下を計画している。2021年度に構築した仮説をより精緻化するために、定性調査を行う。定性調査はインタビュー形式とし、日本およびスウェーデンを含む北欧のB2B企業とする。双方とも複数社の企業を対象とする。被験者はエグゼクティブ層からマネジメント層の範囲を計画している。定性調査結果を分析し、精緻化した仮説モデルを構築する。その後、仮説モデルを検証するための定量調査を行う。対象企業は日本、北欧ともB2B企業とし、日本は約2万社、北欧は数千社へ依頼することを計画している。回収率は双方とも10%程度を見込んでいる。分析は、統計ソフトを使用し、共分散構造分析や階層的回帰分析などを使用することを検討している。 定性調査、仮説モデルの構築および定量調査設計を2022年度中に行い、定量調査を2023年度に実施するスケジュールを予定している。
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Causes of Carryover |
COVID-19による物理的な活動が制限されたことで次年度使用額が生じた。生じた主な理由として、研究社同士のミーティングにおいては、ほぼすべてがWeb会議に置き換わったことや、定性調査(インタビュー)候補企業への事前ヒアリングなどもオンラインに切り替わったりしたことがあげられる。 年度の切り替わり時期からCOVID-19による行動制限も徐々に緩和されてきていることから、翌年度は主に以下の2点を計画している。1つ目はインタビューにおける候補企業への訪問時の交通費や録音データの文字起こしの外注費などである。訪問先は北欧地域の複数拠点になること、インタビュー言語が英語になることから、文字起こし作業に費用がかかるためこれらの費用を計上している。また、文字起こし後のテキストデータの整理作業に作業補助員を雇うことを予定しており、この費用も計上している。2つ目は国際会議や論文などの研究成果発表である。国内学会では未だオンライン開催が主流であるが、国際会議は開催地での対面参加に移行しており、参加費の他交通費を計上している。また、英語論文の英訳校正費用を計上している。
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