2022 Fiscal Year Research-status Report
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21K01729
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
村上 由紀子 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (80222339)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 綾乃 日本経済大学, 経営学部(渋谷キャンパス), 准教授 (80755976)
鈴木 章浩 常葉大学, 経営学部, 講師 (60779411)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 産学連携 / 人材 / キャリア / 国際連携 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究開発における国際産学連携には高い成果が期待されているが、日本ではそれを担う人的資源に課題があるために、日本を含む国際産学連携は少ない。そこで、本研究は国際産学連携を担う中心的な人材である研究者と大学のリサーチアドミニストレーター(URA)について、長期的なキャリアと国際産学連携の環境を日独米で比較分析し、国際産学連携活動の成果に影響を与える要因と、国際産学連携を支える制度・政策を、人材の観点から考察することを目的としている。 2023年度は第一に、研究者を対象とするアンケート調査を実施するための準備を行った。日独、日米、日独米の研究者の組合せを含む国際産学連携チームで、2017年と2018年に論文を発表した約1500のチームを見出し、それらのチームの研究者に対するアンケート調査票を作成した。先行研究や過去のインタビュー調査の結果をもとに、重要であると特定された内容は、研究者のキャリア、チーム形成の動機・経緯やメンバー構成、国際産学連携のチームマネジメント、所属組織や国などからのサポートであることがわかり、それらに関するアンケート調査の質問項目と選択肢を特定した。 第二に、昨年のURAに関するインタビュー調査は国立大学に限られていたが、2023年度は私立大学、URA個人、リサーチ・アドミニストレーション協議会に対してもインタビューを行った。二年間にわたるインタビューの結果、URAのキャリアに関して、組織内キャリア形成、職業内移動によるキャリア形成、知識労働者の他職種からの参入によるキャリア形成の三パターンがあることが明らかとなり、それぞれの問題や課題を見出した。 第三に、特許情報の整理を行い、チーム構成等が研究パフォーマンスに与える影響を分析することで効果的な国際産学連携チームの組成や連携のあり方を明らかにするための準備を整えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は、研究チーム対象のアンケート調査票を完成させ、日独米のアンケート対象者の選定と連絡先のリストを作成することを第一の目標とし、また、日本のURAに関するインタビュー調査の対象を拡大し、調査から得られた知見を発表することを第二の目標としていたが、研究実績の概要に記述した通り、これらの2つの主要な目的を達成することができたため、おおむね順調に進展していると判断することができる。 さらに、特許情報の統計的分析を行うために、研究者ごとに情報を抽出し、研究者の所属組織や経験年数、累計特許出願数、被引用回数等の情報を整理するためのマクロを整備するとともに、社会ネットワーク分析を実施するために各研究者の共同研究者名の抽出等の作業を完成し、次年度の統計的分析につなげることができた。しかし、ドイツとアメリカの大学に関するインタビュー調査の件数はまだ少なく、海外情報の収集は文献収集に限られ、インタビュー対象者へのアクセス方法を模索している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の柱は主に5つある。第一に、昨年度までに準備が整った研究者対象のアンケート調査を実施し、得られたデータの解析を行うことである。これによって、研究者のキャリア、チームマネジメント、組織の施策や国の政策が国際産学連携の成功に与える影響を、国による違いと共に明らかにする。第二に、特許分析により、効果的な国際産学連携チームの組成や連携のあり方を明らかにする。また、国際産学連携の経験のある研究者とない研究者のキャリアやネットワークの違いを明らかにして、国際産学連携の人材を育成する上での課題を考察する。第三に、国際産学連携のチームを対象にしたインタビュー調査を行い、国際産学連携チームが形成され、研究が実行され、成果が発表されるまでの一連の過程の具体的事例に即して、国際産学連携の成功要因を、人材と彼らを取り巻く環境要因から分析する。第四にURAに関する分析を深める。昨年度までは、限られた数のインタビュー調査により国際産学連携の方針とURAの雇用や活用、URA自身のキャリアとスキル形成を分析したが、今後は、URAを対象にしたアンケート調査により、大規模サンプルを用いて、インタビュー調査の結果が一般化できるかどうかを検証する。第五に、ドイツ、アメリカの大学に対して国際産学連携の方針、実施の環境とプロセス、国の政策や社会制度の影響、URAの役割についてインタビュー調査を行い、国による制度・政策の違いが国際産学連携の人材のキャリアと環境に与える影響を分析するための情報収集を行う。また、以上の研究により得られた成果を随時公表していく。
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Causes of Carryover |
2022年度はコロナ問題が続き、学会発表やインタビュー調査をすべてオンラインで行ったために、交通費の出費が予定より少なかったことと、書誌情報を用いてアンケート対象者のリストを作成する作業が、予想していたよりも効率的に行えたために、学生アルバイトの雇用にかかる人件費が少なかったことが、次年度使用額が生じた主な原因である。「今後の研究の推進方策」の第四に記述したURAのアンケート調査は、事業開始当初に計画されていなかったが、このようにして節約することのできた資金を使って実施する予定である。また、残りの助成金は、「今後の研究の推進方策」に記載した他の課題を遂行するためと、今年度から本格的に開始される対面による国際学会に参加するための旅費に使用する計画である。
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Research Products
(4 results)