2021 Fiscal Year Research-status Report
中間持株会社の生起メカニズムの解明:理論的・実証的研究
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21K01730
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
大月 博司 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (50152187)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金 倫廷 北海学園大学, 経営学部, 講師 (20611255)
古田 駿輔 早稲田大学, 商学学術院, 助手 (40879673)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 中間持株会社 / 持株会社 / グループ経営 / 求心力 / 遠心力 / 組織コントロール / 正統化 |
Outline of Annual Research Achievements |
わが国においては、業種を超えて純粋持株会社が普及する一方、中間持株会社の現象が徐々に見られるようになった。この現象に着目すると、その生起が必然的性格を持つのか、それとも一時的なものかはまだ不明である。そこで本研究は、中間持株会社の事例を収集・整理することで、当該事例の生起について研究が図られた。まだ業種横断的に議論できるほまでに至ってないが、事実の妥当性を主張できるほどの事例を集積する至った。そして、中間持株会社を採用するケースとそれを廃止するケースがあることが判明した。この点は、研究企画の段階では想定していなかったことであり、その究明も今後の新たな課題として設定することにした。 そうした中で、本来の課題である①純粋持株会社体制なのに中間持株会社が生起するメカニズムの探求(研究宇代表者)、②中間持株会社体制のグループ経営における正統化のメカニズム探求と変異メカニズムの探求(研究分担者)、③グループ経営としてのコントロール・メカニズムの探求(研究分担者)を進めた。 その結果、各課題に対する研究レビューを通じて、想定したメカニズムの精緻化が図られた。具体的には、企業業績との間連、企業文化のあり方、グループ本社のパーパス経営の取り組み度合いなどについての見直しである。しかし、純粋持株会社における中間持株会社の必然性については、インタビュー調査がコロナ禍のため十分に行うことができず、まだ合理的な説明のできるモデル構築には至っていない。同じく、正統化のプロセスに変異が見られる現象についての合理的な説明モデルの構築も、変異の程度の測定がまだ妥当生の観点で不十分なため、未達である。さらに、純粋持株会社がどのような意図(求心力と遠心力)で中間持株会社をコントロールするかのメカニズムの構築も未達である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本来なら計画どおりに研究を進め、その成果を順調に出すはずだったが、コロナ禍のため狙い通りのパフォーマンスを上げることができなかった。具体的には、中間持株会社の現象を対象とした研究の盛り上がりも低調となり、そのレビューによる知見が想定以下となってしまい、中間持株会社のバリエーションのパターン化を確認することができなかった。そのため、中間持株会社が生起するメカニズムの一般化を想定したモデル構築には至らなかったのである。その理由は、コロナ禍によって企業行動も様子見が多くなり、新たに中間持株会社形態を実現する事例が少なく分析が十分に行えなえなかったかららであり、予定していた研究出張ができず、仮説の妥当性を確認できるような事実を得ることが不可能になったからといえる。 そこで今後は,提案するモデルの妥当性に問題が残らないように事実ベースの研究を継続的に進めるとともに、中間持株会社が生起するメカニズムを構造分析だけでなく、プロセス分析も行い、そこに業種横断的に一般化できる、しかも予測力のあるモデル構築を試みる。その際に、グループ経営のあり方という視点から、中間持株会社が必然的に生起するために必要となる要因を特定化できるようにしたい。なお、いろいろと研究を進める中で、研究が停滞してしまったグループ経営のパフォーマンスを上げる要因という観点から中間持株会社形態を見る必要があろう。 いずれにせよ、ネットワーク技術の進展がもたらす影響要因を考察対象に取り入れて、ネットワーク論の知見も応用してみること、そして、親会社と子会社間、子会社間のネットワーク関係についてDXの視点を組み入れて分析し、中間持株会社が実効性を高めることができる理論的枠組みの構築とその実証を図っていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
情報ネットワーク化の進展は,DX(デジタル変革)の影響をますます受けており、グループ経営の観点からDX発展のトレンドを適用することが求められている。これが意味するところは、必要情報の入手の自由が増大するとともに,情報の経済性を生かすことができるかどうかが問われることである。ただし、必要情報が入手されるほど,選択の自由が制約されるというパラドックス状況に直面することも多くなる。有効な持株会社に必要な情報量が多ければ良いとは限らないのである。そうした問題を避けるには,情報のインテリジェンス化が必要であろう。すなわち、情報の量的側面より質的側面を重視することである。この点に関して,今後は積極的に研究を進めるとともに、その成果を広く公表し,研究に資するフィードバックを得る予定である。また,以上の点を踏まえた分析を通じて想定される理論枠組みについて、その一般化の可能性を探る必要ある。そのために、わが国ばかりでなく欧米アジア圏における中間持株会社の事例検討を進め,海外の研究者と研究交流を図りながら研究の深化を図る予定である。 こうして、当初のよていより研究範囲が広がったが、本研究の狙いどおり,定量・定性分析を通じて共通因子を探りながら事業子会社コントロールの有効性の度合いと中間持株会社のパターン化の関連を確認していく。とりわけ,時間軸を考慮に入れた場合の分析を行い,静態的な分析とは異なる何らかの発見に結びつけたい。そして,新しい理論モデル構築とその一般化の可能性を探るために,わが国企業の海外子会社の自律性と規律性の事例についても検討する予定である。 その際に、各研究課題について、一方で研究代表者と分担者が独自に研究を進めるとともに、他方で全体的な整合性を図るために随時研究チームとミーティングを行いお研究の深化を図る予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のために国内外への研究出張の予定が果たせなかったため。
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