2023 Fiscal Year Research-status Report
中小製造業のIoT活用と進展に関する研究:スキルの明確化と組織的施策を中心に
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21K01732
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
弘中 史子 中京大学, 総合政策学部, 教授 (10293812)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寺澤 朝子 中部大学, 経営情報学部, 教授 (40273247)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 中小企業 / デジタル化 / 製造業 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度は,次の2点を中心に研究を進めた。 第一に,本研究で依拠する理論として,令和4年度から既存研究の渉猟を行い,我々の研究課題への適応可能性を探ってきた組織的刷り込み理論について,本年度は実証研究との接合を視野に入れて,考察を深めた。 具体的には,組織創設時の敏感期において刷り込まれた行動様式が,時代を経て敏感期に入ったときに再び活性化する側面に着目した。行動様式としては,日本の製造業の強みを支えてきた5Sとカイゼン活動をとりあげた。また,IoTおよびデジタル化成功に必要なスキルとして,ムダの顕在化やムダの排除にも着目した。 第二に,日本の中小企業におけるIoTおよび製造現場のデジタル化の成功要因を探るため,日系中小企業のベトナム製造拠点で視察・聴き取りを行った。ベトナムでは新型コロナウィルス感染拡大後に人件費が大幅に上昇するとともに,ローカルの企業の技術力が向上し,ベトナム子会社は敏感期に入っていた。一方で,ベトナム人社長は,日本本社での勤務経験が長く,5Sの実施やカイゼン活動の実践的手法が刷り込まれていた。このような刷り込まれた行動様式が,敏感期に再び強化されており,さらにIoTやその他のデジタル化とうまく融合して大きな成果を上げていた。 日本の中小企業の海外子会社がIoTやデジタル化に成功した要因を,特に組織的施策を中心に探ることで,類似性のある日本の中小企業が応用できる可能性を提示することを意図して研究成果を論文にまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度よりキャッチアップしつつあるものの,当初の研究計画時よりはやや遅れている。主たる要因は,研究開始時期に,新型コロナウィルス感染拡大危機による行動制限の影響で,生産現場に関する日本国内や海外での訪問調査が,想定通りに進まなかったことにある。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は,日本の中小企業の海外子会社におけるIoTおよびデジタル化の進展を,刷り込み理論に依拠して研究を進めた。 令和6年度は,それらの研究をさらに深化させるべく,海外子会社によるIoTおよびデジタル化の進展が,中小企業の日本本社に与えた影響を中心に調査・分析を進めたい。日本本社が置かれている経営環境はベトナム子会社とは異なるものの,原材料・エネルギー費の高騰,カーボンニュートラルへの対応等が中小企業に与える影響が大きいことがこれまでの調査でわかっており,敏感期に入っていると考えられる。この敏感期に,何をどのように実施すればIoT・デジタル化を成功裏に実施することができるのかについて,まず「問題点の顕在化」「ムダの排除」「5Sの徹底」の実践スキルに着目したい。また,デジタル化によるカイゼン活動を実現する組織的施策についても探っていきたい。 今年度中に、組織的刷り込み理論のフレームワークをより精緻化し、日本と海外の製造拠点におけるIoT活用施策の進展を導く実践的手法と管理施策を明らかにするため,ベトナム以外の国での調査にも意欲的に取り組みたい。
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Causes of Carryover |
主たる理由は,研究開始時からしばらくの期間,新型コロナウィルス感染拡大危機による行動制限による行動制限の影響で,生産現場に関する日本国内や海外での訪問調整が想定通りに進まなかったため,次年度使用額が累積したことにある。 使用計画としては,令和5年度と同様,今年度も国内・海外での積極的な調査を計画している。
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