2021 Fiscal Year Research-status Report
デスティネーション・ブランドに対する愛着の醸成と影響に関する実証的研究
Project/Area Number |
21K01743
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Research Institution | Chiba University of Commerce |
Principal Investigator |
安藤 和代 千葉商科大学, サービス創造学部, 教授 (60409620)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | デスティネーション・ブランド / 愛着 / ブランド・パーソナリティ / 恐怖 |
Outline of Annual Research Achievements |
世界的に誘客競争が激化する中で、各観光地は国内外の観光客から目的地として選択され、一度ならず繰り返し訪問される旅行目的地となるため、デスティネーション・ブランドの構築や管理に注力している。また旅行者との感情的な絆を構築し、愛着を醸成することに取り組んでいる。本研究では「ブランド愛着」研究の知見をベースに、旅行目的地ブランドに対する愛着の醸成プロセスの実証研究に取り組む。またブランド愛着は消費者の態度や行動に影響することが先行研究で指摘されている。旅行目的地ブランドへの愛着が旅行者の態度や行動にもたらす影響を検証することや、旅行者特性、旅行目的地特性、状況特性による調整効果について研究を行う。 従来、旅行需要は政治や経済のイベント、事故や自然災害などにより多大な影響を受けてきた。2020年に端を発したCOVID-19の感染拡大が旅行業界に与えた影響の大きさを見ても明らかである。海外ではロックダウンが実施され、日本でも外出自粛が呼びかけられた。こうした制限が旅行需要に直接的に与える影響はもちろんのこと、COVID-19感染下および感染リスクが抑えられたのちの旅行や移動に対する消費者心理に影響をもたらす可能性は小さくない。旅行に対する価値観や消費意欲に変化がもたらされたのか、マクロな社会環境変化の影響を把握し理解することにも取り組む。コロナ禍がもたらした恐怖やリスク認識といった消費者心理の変化やその影響について考察し、検証する。各観光地が取り組むべき効果的なブランディング施策を提示することにつなげたいと考えている。 2021年度においては、先行研究の知見を理解し課題を抽出するため、ブランド愛着、ブランド・パーソナリティ、デスティネーション・ブランドをキーワードに、マーケティング研究ならびに旅行研究のジャーナルを概観した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
予定外の案件として、COVID-19の影響で授業方法が変更となり、それに伴うコンテンツの修正・補充を行う必要があったこと、延期していた在外研究の2022年度実施が決定したため、関連する手続きや準備を行ったこと、新たな研究プロジェクトがスタートしたことなどがあげられる。本研究に予定していた時間の一部をこれらに充てる必要があったため、進捗に影響した。また、2021年の取り組みの1つとして、デスティネーション・ブランド構築に成功している自治体やDMOの取材を行うことをあげていたが、COVID-19の影響で出張ならびに域外移動自粛の要請が出ていたため実施を見送ったため、やや遅れていると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、2021年にレビューし理解した先行研究の成果と課題を念頭に、実証研究を行う。1つには、近年の旅行研究で注目され多く取り組まれている宿泊施設に対する旅行者満足に関する研究成果をふまえ、デスティネーションに対する愛着の醸成プロセスを考察する。宿泊施設研究に注目が集まる要因として、宿泊施設に支払われる費用は旅行支出全体の大きな部分を占めており、経済的インパクトが大きいことがあげられる(Guttentag, 2015)。さらに、シェアリングの仕組みを用いたサービスが浸透しはじめているが、宿泊施設においても同様に、個人間で資源を提供・共有するP2P型のサービスが広く提供されるようになった。旅行者の意思決定がより複雑なものになっていることを踏まえ、宿泊施設に対する旅行者の心理や行動の解明に関心が集まっている。 本研究でもP2P型宿泊施設の複数の特徴が、利用者の満足にどのように影響を与えているのか、また両者の関係を愛着が媒介するのか、といった視点で実証的な研究を行う。 2つめの取り組みとして、「COVID-19が我々にもたらした生活環境保変化により、消費者の心理や行動、特に旅行を対象とする消費行動に影響を与えたのではないか」というリサーチクエスチョンを設定し、実態把握に取り組む。大規模調査を行い、データを分析・考察を行う予定である。
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Causes of Carryover |
2021年の取り組みの1つとして、デスティネーション・ブランド構築に成功している自治体やDMOの取材を行うことをあげていたが、COVID-19の影響で出張ならびに域外移動自粛の要請が出ていたため実施を見送った。そのため関連経費が発生しなかったことが、次年度繰越金が発生した主たる要因である。
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