2022 Fiscal Year Research-status Report
An Empirical Study of the Multi-Channel Strategy of Japanese Firms
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21K01752
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
崔 容熏 同志社大学, 商学部, 教授 (70315836)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保 知一 中央大学, 商学部, 教授 (40376843)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | マルチ・チャネル / ガバナンス / マーケティング / 流通 / チャネル成果 / 価値創造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は2つの研究を行った。第1に、前年度から取り組んできたマルチ・チャネルにおける水平的および垂直的ガバナンスがチャネル成果に与える影響に関する論文を執筆し、出版した。マルチ・チャネル構造の多次元性に注目し、マルチ・チャネルの二重性(duality)と多様性(variety)が、情報共有と水平的調整という二つのガバナンス・システムと結合し、チャネル成果に如何なる影響を及ぼすのかを経験的に分析したものである。同研究から得られた主要な知見は次の通りである。チャネルの多様性には、情報共有という垂直的ガバナンスがチャネル成果に与える正の影響を緩和する働きがある。しかし、チャネルの二重性は水平的調整が成果に及ぼすポジティブな影響を強化する。 第2に、チャネル・ガバナンスの選択に影響を与える主要な先行要因の属性と、現実の企業が選択したガバナンス構造との非整合性(misalignment)が、複数の企業成果に対してどのような含意を持つのかについて、日本の製造業者402社から収集された定量データを用いて実証分析を行った。この研究はマーケティング分野の英文ジャーナルに投稿され、現在査読結果を待っている状況である。同研究にからの刮目すべき分析結果の一つは、過小なチャネル統制度は、チャネル・サービスの差別化効果を軽減させるという否定的な結果をもたらすということである。従来の研究が注目してきた、取引費用の削減や機会主義の抑制という負の回避だけではなく、チャネルが生み出す差別化効果という正の促進という側面を浮き彫りにしたことに、本研究の重要な貢献があると考えられる。 以上に加え、次年度以降新たに取り組む研究のためのモデル設計と、調査データ収集のための予備調査を進めたのも、本年度の研究内容として取り上げられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度は、文献レビューに基づく先行研究の検討に併せ、2023年度以降の実証研究を遂行するための仮説設定、調査設計及びデータ収集の可能性の検討などを進めてきた。しかしながら、その準備のための聞き取り調査や共同研究者の打ち合わせなどを計画通りに行うことができなかった。2023年度は、この点を補完し、調査設計を完成するとともに、年度末までには企業に対するサーベイを実施する計画である。
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Strategy for Future Research Activity |
過年度に収集済みのデータを利用した分析結果に基づいた論文を現在執筆中であり、9月までには完成し、海外の英文ジャーナルに投稿する予定である。それに併せて、2023年度には新規のサーベイを実施する計画であるが、郵送調査による1次データだけではなく、それと組み合わせて活用できる2次データの入手可能性を現在模索中である。分析結果の頑健性を担保するためには必須の部分である。主には企業成果に関連する指標を中心として検討しているが、一部チャネルにおける取引構造に関連するデータも散見されるために、その可能性をめぐって共同研究者と綿密に調整を進めていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
2022年度に実施予定であった大規模企業調査を2023年度中に行う予定である。
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