2021 Fiscal Year Research-status Report
同一製品の形態の相違が消費者に及ぼす影響―デジタル財の利用促進に注目して―
Project/Area Number |
21K01770
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
權 純鎬 早稲田大学, 商学学術院, 助手 (40843941)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | オンライン環境における触覚経験 / 心理的所有感 / 製品の提示形式 / 典型的ビュー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、同一商品において、有形製品と有形製品が無形化された場合(例えば、書籍や漫画の電子化等)、その製品に対する消費者評価が異なることに注目している。特に、無形化された製品(以下、デジタル製品)は有形製品よりも評価が低くなる傾向にあることに着目しており、デジタル製品の利用促進に関するマーケティング・コミュニケーションに関する実証的な研究に取り組んでいる。採択初年度の2021年度は、製品形態が製品評価に及ぼす影響要因に注目し、先行研究のレビューを実施した。その結果、「①製品画像の提示形式」と「②心理的所有感」の2つの視点から研究を進めている。また、①②は途中段階であり、国内と海外の学会で研究成果の一部を報告した、 ①デジタル製品は物理的に触ることができないことから、製品画像からの触覚の手がかりが重要な役割を果たすと考えており、その中でも製品画像の提示形式という手がかりに注目した。多くのECサイトで、製品画像の提示形式として、左斜め向きと正面向きの2つの提示形式が混在している。左斜め向きの提示形式は、典型的ビュー(Canonical view)の一つであり、最も典型的に見えるがゆえに消費者の注意を引くとされている。本年度は、典型的ビューを利用した左斜め提示形式と正面向き提示形式が消費者の製品知覚及び評価に及ぼす影響について調査を実施した。 ②また、デジタル製品は、サブスクリプションサービスなどの法的な所有権を持たない取引形態が多く、先行研究のレビューからこのような特徴が有形財に比べてデジタル製品に対する所有している感覚を知覚しにくくしていることが示された。そして、このような“所有感”と関連している研究として「心理的所有感」(対象を“私のもの”と知覚する心理的状態)という概念を取り上げ、心理的所有感を高める要因の一つである対象へのコントロール感の生起要因に注目した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで、「触覚経験を想起させるような手がかりについての探索的な調査」について、「製品の提示形式が消費者の感覚に及ぼす影響」と「電子媒体の操作に伴う触覚経験」の2つからアプローチを試みた。前者の場合、既に2回にわたる学会発表を行っており、論文としてまとめている。また、後者の場合も調査から一定の成果を得られており、その一部を学会で報告している。論文投稿に向けて共同研究者との議論を重ねている。 つまり、当初より計画していた「先行研究のレビュー」と「触覚経験を想起させるような手がかりについての探索的な調査」は、学会発表や共同研究者との議論を重ねており、一定の進捗があったと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、先行研究の丹念なレビューと探索的な調査を行っており、その結果から研究の方向性を確かめることができた。 今後の研究の推進方策の一つとして、先行研究のレビューを体系的にまとめ、論文として投稿する予定である。このことにより、先行研究で取り上げられている理論や知見を俯瞰できること、またそこから今後の研究に向けて課題を抽出することができると考えているためである。 同時に、2021年度の調査は探索的に行われていたため、さらなる追加調査を実施していくことでより精緻な仮説検証を目指す。調査は、クラウドワークスやヤフークラウドソーシングなどのクラウドソーシングプラットフォームを用いたインターネット調査を行う予定であるが、必要に応じて学生を対象とした実験室調査を実施し、様々な要因をコントロールして調査結果の頑健性を高めていくことも考えている。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由 国際的論文誌への投稿を予定して、原稿の英文校正費として予算の前倒しを申請したが、予定よりも進捗が遅れているため、2021年度内に執筆を終わらせることができなかった。現在、原稿の執筆を進めており、2022年度上半期までには英文校正に出すことを目標として研究を進めている。
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Research Products
(4 results)