2021 Fiscal Year Research-status Report
業績測定システムを通じたトップ・マネジメント・チームの多様性の効果に関する研究
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21K01777
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Research Institution | Otaru University of Commerce |
Principal Investigator |
乙政 佐吉 小樽商科大学, 商学部, 教授 (20379514)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 業績測定システム / 経営上層部理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、わが国企業における近年の統治構造改革を踏まえて、「どのようなトップ・マネジメント・チーム(Top Management Team)の下でどのように業績測定システムが設計・運用されれば効果を生み出すのか」について実証的に明らかにすることを目的としている。本研究の目的を達成するために、初年度である2021年度には、先行研究のレビューを中心に研究を実施している。初年度である本年度では、先行研究のレビューを通じて理論的枠組みおよび仮説命題の精緻化を行っている。 研究実績として、成果の一部を「国際学術雑誌の潮流からみたわが国マネジメント・コントロール研究の特徴」というタイトルで、日本管理会計学会2021年度年次全国大会にて報告した。報告に際しては、わが国マネジメント・コントロール研究について内容分析を実施している。具体的には、国際学術雑誌を北米雑誌と欧州雑誌とに,わが国主要会計雑誌を査読有雑誌と査読無雑誌とに区分した上で、掲載論文数の推移、採用された研究方法、用語頻度、用語頻度の推移、採用された研究方法と用語頻度との関係をそれぞれ分析した。用語頻度に着目した内容分析を採用することによって、論文数の分析を中心とする書誌学的方法からは得られない、各論文でのマネジメント・コントロールに関する議論や関心の程度を抽出することが可能になった。内容分析の結果、一つに、わが国査読有雑誌と欧州雑誌との類似性を見出した。二つに、わが国査読無雑誌の独自性を指摘した。最後に、安定的に論文を掲載する査読有雑誌と、論文中で高い関心を示す査読無雑誌とのあいだでマネジメント・コントロール研究の進展に関して役割が分化されていることを明らかにした。 上で明らかにした内容は本研究を進める上での前提を整理することにつながっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、わが国企業における近年の統治構造改革を踏まえて、「どのようなトップ・マネジメント・チーム(Top Management Team)の下でどのように業績測定システムが設計・運用されれば効果を生み出すのか」について実証的に明らかにすることを目的としている。 初年度は、先行研究のレビューを通じて理論的枠組みおよび仮説命題の精緻化を研究活動の中心とした。先行研究のレビューに関しては、業績測定システムに関する文献に加えて、管理会計研究において経営者の特性や経営チームのメンバー構成がどのように捉えられているのかについて網羅的にレビューを実施している。 また、初年度から事例研究も展開している。調査企業の選定には次の4つの手順を踏む予定である。①イノベーションの実現に積極的に取り組んでいると判断した企業の公表資料を収集する、②公表資料から対象企業の事例を記述する、③記述した事例から調査すべき質問項目を導き出す、④対象企業にインタビュー調査の依頼を行う。 現時点において、上記手順の②の段階を終えた時点での成果として、未公表ながらもケースを2本執筆している。なお、本年度は、コロナ禍において大きな移動が制限されたため、北海道の市町村に対して訪問調査を行った。対象を非営利組織にまで広げることになったものの、本研究の頑健性を高めるために有用であろう。 第2年度には、事例研究を本格的に展開していくことになる。先行研究のレビューと合わせて、本格的な事例研究を実施するための準備は着実に進んでいる。以上から、次年度以降の研究を進めるにあたって、本年度はおおむね順調に研究が進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、研究目的を達成するために、方法論的トライアンギュレーションの実施を計画している。具体的には、①先行研究の厳密なレビューに基づいた理論的枠組みを構築しつつ、②事例研究を通じて仮説命題の精緻化を行うとともに、③大量サンプルによるサーベイ調査を通じて定量的研究を定点的に実施する。研究を進めるに際しては、①および②のプロセスは繰り返し実施することになる。 本年度において、①の先行研究のレビュー、および、②の事例研究の一部を実施している。とはいえ、③の質問票調査の実施を考えた際に、いまだ質量ともに十分を収集できたとは言えない状況にある。方法論的トライアンギュレーションを実行するためには、理論的枠組みおよび仮説命題の精緻化をさらに進めていかなければならない。 したがって、第2年度においても、第一に、先行研究のレビューを継続する。第二に、調査対象企業の選定を継続しながら、事例研究を本格的に展開する。第三に、コロナ禍での制限によって実施した北海道の市町村への調査結果を有効活用する、第四に、事例研究を展開する中で執筆したケースを研究論文へと発展させる。第五に、先行研究のレビューや事例研究から得られたデータをもとにして、質問票調査を実施するための下準備を行う。最後に、中間報告として、事例研究から得られた知見について国内の学会にて報告する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍において、東京や大阪への移動が制限されたことから、大きな移動を伴う訪問調査を控えざるをえなかった。それゆえ、当初予定していたよりも出張旅費としての使用が大幅に減ることとなった。 予断を許さないものの、コロナ禍が収束に向かうことを前提として、次年度には本格的に事例研究を展開する。事例研究は基本的に首都圏もしくは関西圏に本社を構える、東証一部二部上場企業を対象とするため、多くの出張旅費を必要とする。事例研究の感覚を詰めながら、初年度に実施できなかった分も残りの2年間で実施することによって、最終的には予定通り助成金を使用できると考えている。
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