2021 Fiscal Year Research-status Report
企業と政治の関わりが財務報告に及ぼす影響とその経済的帰結に関する実証研究
Project/Area Number |
21K01778
|
Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
島田 佳憲 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 准教授 (70733351)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 政治的つながり / レント・シーキング / 経営者予想 |
Outline of Annual Research Achievements |
企業はレント・シーキング活動の一環として政治的つながりを構築することがある.こうしたレント・シーキング活動により収益が増加したり費用が減少したりするのであれば,財務報告にレント・シーキング活動の効果が発露する.そうした効果を期待して経営者は業績予想に政治的つながりの影響を織り込む可能性もある.くわえて,投資家などの利害関係者も,こうした効果を踏まえて,企業価値評価を実践する場合,さまざまな点で経済的帰結を観察することができ得る.本研究課題は,どのように企業の政治的つながりが財務報告およびその経済的帰結に影響するかの一端を明らかにしようとするものである. 令和3年度は,政党へ企業献金を実施している企業および中央政府の政権交代に着目して差分の差分(difference-in-difference)の分析手法を適用することで,企業献金が売上高にどのような影響を及ぼしているかを明らかにしようとした.分析の結果,企業献金先の政党が与党であるときに比べて,野党である期間には企業献金実施企業の売上高実績値が減少する傾向があることが明らかになった.企業献金はレントの獲得に貢献することが示唆される.また,こうした企業の売上高予想の特徴を分析すると,つぎのことが明らかになった;献金先政党が野党である期間において企業献金実施企業の売上高予想は,(a) 下方に修正される,(b) ネガティブ・サプライズが大きくなる,そして (c) 予想誤差が小さくなる,という傾向がある.これらは企業が企業献金から恩恵を受けられないとき,売上高予想が悲観的になることを示唆する.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
論文刊行や学会発表はできていないが,本研究課題の研究内容の一つである企業の政治的つながりと財務報告の関連性について一定の主要分析結果は得られているため.
|
Strategy for Future Research Activity |
企業の政治的つながりの財務報告に対する効果がどのような経済的帰結をもたらすかを明らかにするため,インプライド資本コスト,株式リターンや企業価値評価に対する影響を分析する.
|
Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症の渡航制限の影響で,当初予定していた海外学会発表を実施しなかったため.今後は海外学会への参加の見通しが立てば海外旅費,立たない場合には英文校正やデータベース構築に利用する予定である.
|