2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21K01781
|
Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
野間 幹晴 一橋大学, 大学院経営管理研究科, 教授 (80347286)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 人的資本 / 自社株買い / 戦略変更 / PBR / 海外からの撤退 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度には、次の3つの研究を実施した。 第1に、PBR1倍割れの議論と自社株買い、戦略変更について議論した。まず、PBR1倍割れの背景について説明し、2023年4月から5月に自社株買いの枠を設定した企業の特徴を浮き彫りにする。その結果、ROEが8%未満かつPBR1倍割れの企業が自社株買いの枠を設定したことを明らかにした。最後に、過去約20年における日本企業の戦略変更を測定し、企業価値向上のためには経営資源のダイナミックな変更が必要であることを議論した。 第2に、2023年3月期から有価証券報告書で開示が要求された人的資本の実態を記述した。調査から、次の4点が明らかになった。第1に、管理職に占める女性の割合は欧米と比較して低い。第2に、プライム市場、スタンダード市場、グロース市場を比較すると、グロース市場に上場する企業のジェンダーギャップが相対的に小さいということである。第3に、業種によって、ジェンダーギャップの特徴に相違があることである。すなわち、第2次産業では男女の賃金格差が相対的に小さいものの、管理職に占める女性労働者の割合は小さい。第3次産業では管理職に占める女性労働者の割合が相対的に高いものの、男女の賃金格差は小さくない。第4に管理職に占める女性比率が高い企業ほど、PBRが高い。 第3に、日本の多国籍企業の対外M&Aにおける、自国と相手国との地理的距離が、企業売却の意思決定に与えるプラスの影響について分析した。2005年から2015年にかけて45の国と地域で行われた496社による868件の買収を分析した結果、地理的距離の影響を軽率に推論する前に、様々な海外売却の動機を明確に区別することの重要性が浮き彫りになった。 研究期間全体では、PBR1倍割れの成熟ステージ、対外M&Aという成長ステージ、対外M&Aからの撤退ステージについて、研究を蓄積した。
|