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2022 Fiscal Year Research-status Report

Empirical study on the usefulness of financial statement footnotes

Research Project

Project/Area Number 21K01782
Research InstitutionKobe University

Principal Investigator

音川 和久  神戸大学, 経営学研究科, 教授 (90295733)

Project Period (FY) 2021-04-01 – 2025-03-31
Keywords注記事項 / 投資意思決定有用性 / 証券市場
Outline of Annual Research Achievements

1番目に、サンプル・サイズを約3.5倍に拡大した上で、国際会計基準(IFRS)に基づき損益計算書の本体または注記事項として開示される人件費の金額と、日本基準に基づき従業員の状況で開示される情報を用いて推定した人件費の金額が乖離する程度について、更なる分析を行った。そして、①日本基準とIFRSに基づく人件費の乖離度が時間的に安定している企業がある一方で、日本基準とIFRSに基づく人件費の乖離度が年度によって大きく変化する企業も少なからず存在すること、②臨時従業員の割合が多い企業、従業員連単倍率が高い企業、従業員の平均年齢が高い企業、提出会社の従業員の平均年間給与が高い企業において、日本基準とIFRSに基づく人件費の乖離度が相対的に大きいことなどの追加的な知見を得た。2番目に、退職給付会計基準の2012年5月の改正を受けて、新しく開示されるようになった「年金資産の主な内訳」と「年金資産の期首残高と期末残高の調整表」に関する注記事項を取り上げて、年金資産を株式・債券・一般勘定・その他で運用する割合の多寡と期待運用収益率または実際運用収益率の関連性を分析した。そして、①年金資産のうち、一般勘定で運用する割合は安定的、株式で運用する割合は減少、債券またはその他で運用する割合は増加する傾向があること、②日本企業の年金資産の運用環境は厳しく、期待運用収益率は年々低下傾向にある一方で、実際運用収益率は年度による変化が大きいこと、③年金資産の内訳と期待運用収益率の関係は、投資リスクの高い資産で運用するほどリターンが大きくなるという直観に反するものであること、④年金資産の内訳と実際運用収益率の関係は、株式で運用するほど投資リスクが高くなることなどを明らかにした。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

1番目に、IFRSを採用している日本企業の有価証券報告書における人件費の開示状況の分析については、サンプル・サイズを拡大して追加的な分析を行った。この研究では、前述した分析結果に加えて、具体的な開示例を示しながら、IFRS採用企業の損益計算書本体またはその注記事項をみれば付加価値などの算定に必要不可欠な人件費の総額に関する情報を入手することができる一方で、企業ごとに人件費の開示パターンが異なるため、財務諸表利用者は当該情報を検索・特定するのに多少のコスト(時間)を掛けなければならないという企業情報の開示上の課題が残されていることを明らかにした。2番目に、退職給付会計基準の注記事項に関する分析については、年金資産を株式で運用する割合が高くなると、その成果である実際運用収益率がプラスになる年度もあればマイナスになる年度もあるという意味で、投資リスクが高くなることを例証した。しかし、退職給付費用の算定で用いられる期待運用収益率の設定にあたって、そのような投資リスクの高さが適切に反映されていないという課題があることを明らかにした。3番目に、税効果会計基準の注記事項の分析については、繰延税金資産の回収可能性の判断に基づいて計上される評価性引当額に焦点を当て、関連する先行研究のレビューを行うとともに、評価性引当額の計上に関する実態調査を進めた。

Strategy for Future Research Activity

1番目に、退職給付会計基準の注記事項については、年金資産を株式・債券・一般勘定・その他で運用する割合の多寡と期待運用収益率の平均的な関係を特定することができた。今後は、期待運用収益率を平均的な関係から乖離して高めまたは低めに設定している企業群を特定した上で、そのような企業行動と将来業績の関係を分析したい。2番目に、税効果会計基準の注記事項については、評価性引当額の計上に関する実態調査に加えて、評価性引当額と将来業績の関係を検討したい。さらに、評価性引当額は、当該企業の将来の収益力に関する経営者の私的情報に基づいて計上されるものであるから、日本企業の経営者が決算短信において公表する次期の業績予想とどのような関係があるのか、またその関係が証券市場参加者に対してどのような帰結をもつのかを調査したい。3番目に、金融商品会計基準の注記事項については、2021年4月1日以後開始する事業年度から、金融商品の時価のレベルごとの内訳等に関する注記事項が新たに開示されることになった。そこで、2022年3月期の有価証券報告書をサンプリングして、いくつかの開示例を調査したところ、総資産に比べて開示対象となる金融資産・負債の割合が必ずしも高くない企業が散見された。そのため、当該課題については、まず、金融資産・負債が総資産の中で相対的に重要な割合を占める業種に調査対象を絞ることにした。しかし、この方策はサンプル・サイズを減少させることになるから、それを補うため、2023年3月期の有価証券報告書を調査対象に含めてサンプル・サイズを確保することにしたい。

Causes of Carryover

金融商品会計基準の注記事項については、前述したようにサンプル・サイズの確保という観点から、2023年3月期の有価証券報告書が提出された後に、2022年度と2023年度の両年度のデータを併せて収集することにしたため、次年度使用額が発生している。次年度は、有価証券報告書の収集やデータ入力に従事する学生を雇用するための経費のほか、証券市場の帰結を分析するために必要なデータベースの更新経費などに充当し、研究を推進することにしたい。

  • Research Products

    (5 results)

All 2023 2022

All Journal Article (4 results) Presentation (1 results)

  • [Journal Article] 拡大・多様化する開示情報・報告書と財務会計研究2023

    • Author(s)
      音川和久
    • Journal Title

      会計

      Volume: 203巻1号 Pages: 53-65

  • [Journal Article] 国際財務報告基準採用企業における従業員給付費用の開示実態2023

    • Author(s)
      音川和久
    • Journal Title

      国民経済雑誌

      Volume: 227巻3号 Pages: 25-42

  • [Journal Article] 決算発表に対する投資家の注文行動-予備的分析2022

    • Author(s)
      森脇敏雄・音川和久
    • Journal Title

      証券アナリストジャーナル

      Volume: 60巻6号 Pages: 17-26

  • [Journal Article] 年金資産の内訳と期待運用収益率の実証的関連性2022

    • Author(s)
      音川和久
    • Journal Title

      会計

      Volume: 202巻2号 Pages: 1-14

  • [Presentation] 財務報告における誤りの発覚による投資家の情報環境の変化2023

    • Author(s)
      尾関規正・音川和久
    • Organizer
      日本会計研究学会第70回関東部会・第72回関西部会・第101回東北部会(JAA2022合同部会)

URL: 

Published: 2023-12-25  

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